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10 夢を追う者(4)
ヒカルのマンション。
所用で出かけていたヒカルが帰ってきた。
「どうだ? カイト、曲の方は?」
「ん? 出来ているよ」
ソファに寝そべるカイトが答える。
「聴かせてもらうぜ」
ヒカルは、パソコンの前に座りヘッドホンを身に着けた。
新曲、『オレを天国に連れて行って』
「へぇ、いい、凄くいいじゃないか、カイト! オレのイメージにぴったり!」
「それは良かった……」
カイトは、そう答えたものの、別のものに気を取られていた。
視線の先にはスマホに映し出されたとある動画。
そこには、偶然にも見つけてしまった映像が流れていた。
アイドルとしてデビューしたダイチの姿。
期待の新人としてのインタビュー。
こうなる事は分かっていた。分かっていたんだが……はぁ……何だろうな、この感情は……。
ヒカルは、カイトのスマホを覗き込む。
「今人気のアイドルの素顔?……何だこれ?」
「いいんだよ……これは」
カイトは慌ててスマホの画面を消した。
「ところで、オレの話聞いていたか?」
「ん? ああ、何だっけ?」
「お前なぁ!」
ヒカルは、カイトの上に飛び込む。
「ぐっ……やめろよ!」
そして、ヒカルはそのまま、カイトのシャツを裾から捲り始める。
「おい、何をやってる?」
「……セックス……」
「はぁ!? 何ですんだよ。俺とお前は恋人でも何でもないだろ?」
「もう一発やってるじゃないか? やり逃げするきか?」
ヒカルは、舌舐めずりをして、いかにも意地悪そうな顔をした。
呆れ顔のカイト。
「お前な……自分で誘っておいて……しかもあれは音楽性の理解をだな……」
「つまり、恋人じゃなくても、曲作りのパートナーならアリって事だ。やらない理由にはならないな」
「バカ、よせって! 早く服を着ろ!」
「へぇ、お前着衣派かよ……ぷっ。顔に似合わず変態だな!」
「……ったく、お前は!」
「とにかく、オレはカイトに抱かれるまでここを動かんぞ! 曲のタイトル通り、オレを天国まで連れて行ってもらう。じゃないと、歌のイメージが掴め切れないからな」
ヒカルは、偉そうにドヤる。
「……チッ、そこまでいうのなら、抱いてやる。いいか、後悔するなよ!」
****
背面座位で、繋がった二人。
ヒカルは、背後からカイトに抱きつかれて身動きが取れない状態で、両足は大股に開かされ、お尻の穴にはぶっといカイトのペニスがギチギチにねじ込まれる。
そして、容赦の無いピストン。
腰をパーンと勢いよく突き上げられると、体はフワッと宙に浮き、落下で再びズボズボと奥まで突き刺さる。
アナルが破裂しそうなまでの圧迫感と、奥の性感帯が肉棒でど突かれる快感が、いっしょく単に押し寄せる。
……こ、こんなの気持ち良すぎだろ……。
ピストンに合わせて、プラプラと上下に揺れるヒカルの勃起ペニス。
その先からヨダレのように透明の汁が滴り、それがスプリンクラーのように飛び散る。
ヒカルは、快感でおかしくなりかけていた。
「うっ、ううう……切ないぜ、オレのケツマンコ。もう、何度も何度も奥までつかれて……いくっ、いっちゃう!」
「おい! なに勝手にいきそうになってるんだ? 我慢するって言ったよな?」
後ろから耳たぶを甘噛みしながら怒鳴りつけるカイト。
ヒカルは、泣きそうな顔でイキの快感を必死に我慢しながら答えた。
「だ、だって、お前のセックス……すげぇ気持ちいいから……うっ、ううっ、いきそう……」
「あん? お前が誘ったんだぞ! 勝手にいくとか許さねぇぞ!」
「そ、そんな事をいったって……ダメだ……オレ……」
「ふざけんなよ! 我慢しろ! てめぇだって男だろ!」
「いくっ……はぁはぁ……オレ……いっちゃう、いくーっ……」
ヒカルは、後ろイキと同時に、トコロテンのようにアナルから押し出され射精した。
精子をまき散らかすヒカルのペニス。
「はぁ? 口ほどにもねぇな? でも、これだけじゃ許さねぇぞ。ほら、望み通り……天国までいかせてやるぜ。天国へはまだまだだぞ?」
カイトはそう言うと、ヒカルのペニスをガッチリと握り締め、萎えゆくのを強引にしごき始めた。
「……そ、そんな……う、ううう……またいっちゃう、いっちゃうよ……カイト、ああーっ!」
****
レコーディング作業は深夜にも及んだ。
ヒカルは、自分のイメージ通りの曲に気持ちよく歌を乗せ、カイトは、その歌に合わせ曲にアレンジを加えていく。
カイトが最後のミックス作業を終えた時には朝を迎えていた。
先にソファで寝てしまっていたヒカルは、目を擦りながら起き上がった。
「うーん……すっかり寝ちまった……カイト、出来たか?」
「ああ……今データの書き出しが終ったところだ……」
目の下に大きなクマを作ったカイトは、ヒカルの方に顔を向けた。
そこで、大きなあくびを一つ。
「これで約束は守ったぜ。わりぃが、寝かせてもらう……」
「ああ、ゆっくり休んでくれ。ありがとうな」
ヒカルがそう言ったときには、既にカイトはバタリと倒れ込んでいた。
ヒカルは、パソコンに向かい、出来立ての曲を再生する。
「さて、どんな風になったかな……」
目をつぶって曲に集中した。
イメージ通りの出来に、うんうん、と満足げに頷く。
……オレはずっと前からこんな歌を歌いたかったんだよな。さすがだぜ、カイトは。
しかし、それは最初のAメロの入りまで。
曲が進むにつれ、ヒカルは驚きで言葉を失った。
……これって、オレが本当に歌いたかった曲か? いいや、違う。過去じゃねぇ。今、これから、この先に、歌いたい曲だ!
それは、ヒカルのイメージを遥かに超えていた。
ヒカル自身でさえ気が付かない、ヒカルの思いが汲み取られていた。
曲が流れ終わった頃には、ヒカルは手に汗を握っていた。
「何だ!? これって……凄い……」
****
カイトはヒカルの歓喜の声で目覚める。
「どうした?」
「悪い、起こしちまったか?」
「いいよ。何があった?」
「それが……」
SNSに上げてからすぐに再生数やリツイートが伸び、数時間で最高記録を更新していた。
ヒカルは、それをカイトに話した。
「オレ、才能ないって思っていたから……信じられなくて」
「まぁ、これがもともとの才能なんじゃないの?」
カイトはさらっと言う。
「そんな事があるかよ……あったとしたら、お前のお陰以外にねぇよ。本当に、ありがとうカイト。オレ、どうお礼をしたらいいか……」
ヒカルは、頭を深々と下げ、カイトを真っすぐ見つめた。
「ば、バカ……ガチで礼を言うな……ったく、お前らしくない」
「いいや、本気だ。本気じゃなきゃ言えねぇだろ……こんな事」
「照れるからよせよ……ったく、調子が狂うな……」
カイトは、柄にもなく赤らめた頬を指で掻いた。
再度、曲を流し、二人はそれを目をつぶって聞いた。
カイトは、曲の終わりまで聞き、ゆっくりと目を開けた。
「まだまだ、改良点があるな……かせよ、直して再アップする」
「いいんだよ、これで……それより」
バサッ……。
ヒカルは、カイトの両肩を掴み押し倒した。
そして、倒れたカイトの胸に自分の片頬を押し付けて囁いた。
「頼むよ……オレ、お前にどうしても礼がしたい。嫌だって言っても受け取って欲しいんだ」
物憂い気に唇を突きだす。
「……ったく、しょうがねぇな……」
カイトは、ヒカルの頬を抑えて、そして口づけをした。
ヒカルは、涙ぐむ。
「ああ……ありがとう、カイト。マジで感謝」
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