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第2話
「あれ………ここで合ってるんだっけ……」
台詞はいかにも間抜け風だが、声は至って冷静だ。
片手に案内パンフレットと、片手に携帯電話。
そして、それらを交互に見て、再度辺りを確認してみる。
少年___畑瀬恵は道に迷っていた。
先日、高校の合格通知と共に学校の案内パンフレットが送られてきた。
自分以外居ない家に宛先人は一人しかいなく、パンフレットと同封されていた手紙を取り出した。
「えっ…と、西城結栄学院……かな?」
おぼろ気な読み方を思いだし、手紙に添って読んでいく。
「理事長…結栄政頼……あれ………?」
今ふと思い出したが、俺はこんな学校を受験しただろうか__?
記憶を振り返り、徐々に思い出していく。
「やっぱり受験した覚えもない…どういうことだろう?」
誤発送だろうか?名前を確認してみる。
「畑瀬恵様……」
もう一度首を傾げる動作をし、おかしい、と考える。
「そうだ、電話……」
と、宛先の欄に載っている学院の番号に電話を掛けようと、手を伸ばした。
プルルルルっ
するとほぼ同時に電話が鳴り、伸ばしていた手を引っ込める。
「………?」
番号を見てみると、先程見た学院の番号と類似していた。紙を持ってきて確認すると、一致していた。
そろーっと遠慮ぎみに受話器を取ると、耳に当てる。
「……もしもし」
『こんにちわ。そちら畑瀬恵様で宜しいでしょうか?』
営業マン風な女性のきりっとした声に、すかさず返事をする。
「はい。畑瀬ですが……」
『失礼しました。私は西城結栄学院、理事長補佐をしております。仲田、と申します』
「西城結栄学院…」
よく理解できていない俺の思考に、相手は気にせず話を続けた。
『学院合格通知と共に、パンフレットを同封したものを送らせていただきましたが、無事に届いておりますでしょうか?』
恵は焦ってその事を聞き返した。
「あの……俺学院の受験をしていないと思うんですけど……何かの手違いとかではないんですか?」
相手は一瞬黙り混み、すかさず答えた。
『…いえ、そのような事はございません。』
きっぱり言われたことに恵は困惑するばかりだった。
『畑瀬様は、確かに西城結栄学院の受験を行われています。』
突如言われたことに動揺してしまう。
「え?…」
『……凡そ一ヶ月程前に、学院アンケートにお答えいただきましたね。それにより、畑瀬様がこの学院に相応しい人物と判断し、正式な手順ではありませんでしたが、理事長が入学を許可されました。』
が、学院アンケート…?
『よって明日には転入と共に、学院の寮で生活していただきます。そちらに宅配の者を取り寄せましたので、手荷物の準備をお願い致します』
テキパキと告げられた言葉にまだ理解が追い付かない。
「え、あの……」
プツン
「……………。」
一方的に電話を切られてしまい、恵はどうしようもなかった。
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