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第7話

「えー…と言うことで今日から転入してきた畑瀬恵君です。皆仲良くしてあげてね」 そう言って竹島先生は俺を横に並ばせて、ほら、自己紹介してとコツいてきた。 「……畑瀬恵です。今日から転入してくることになりました。皆さん、宜しくお願いします」 そう言うと共に、俺はペコリと頭を下げた。 パラパラと拍手が起こる中ちらりと、クラスメイト達の様子を見てみると、何やら生徒たちは妙に静かだった。 担任が来たからだろうか?恵は、よくわからないある程度感じられるこの妙な空気に不安を感じた。 「はい、ありがとう。えー……じゃあ、畑瀬君は……比々野君の隣の空いている席に座ってもらえるかな?」 竹島先生は、あそこ、と一人の生徒の隣の空いている席を指差した。 俺は分かりました、と呟くと席に向かう。 何故だか妙に視線を感じるがこれが、普通のことなのだろうか?と恵は気にしないようにした。 比々野、という生徒が座る席の隣の席に、腰を下ろすとようやくクラスメイト達からの妙な視線は無くなった。 俺は隣で先程から突っ伏している生徒__比々野に少なからずの挨拶をしようと口を開いた。 「…宜しくお願いします、比々野君」 比々野は変わらず突っ伏したままだったが、恵はそのまま前に向き直した。 キーンコーンカーンコーン チャイムと同時に授業が終わり、恵はふぅ、と息を吐いた。 隣をちらりと、見ると比々野は先程と変わらず机に突っ伏したままだった。 恵は視線を比々野から外し、窓から外を見る素振りを見せた。 すると授業が終わった瞬間から感じていた視線の正体が恵に話しかけてきた。 「緊張しちゃった?恵君。まぁ、転校初日の授業だもんねぇ」 その生徒はにこにこと近付いてきて恵の前の席を借りるように話し、どかりと座った。 「えと、貴方は?」 恵は困惑した表情で訪ねた。 「自己紹介してなかったね。僕は有明降矢。降矢って呼んでくれていいから。」 「…はい、降矢くん。これから宜しくお願いします」 「此方こそ、これから宜しくね、めぐ君」 突然のめぐ君呼ばわりに、恵は困惑した。 「…めぐ君?」 「え、だってめぐみ君なんて呼びにくいからさ。だからめぐ君がいいかなって。嫌だった?」 降矢は少し不安そうな表情で聞いてきた。 「いえ…そんな呼ばれ方をされたのは始めてなので。めぐ君でいいです」 「ならよかった」 そう言って、降矢は嬉しそうに笑った。 恵は一緒に笑いながらも、ある事を考えていた。 …大体今の会話で降矢の性格や、回りからの信頼度が分かった。 恵は昔からある事情により癖のようにしてしまう、会話や動作で相手のクラス内での立場や状態を把握することができてしまう。 降矢のこのクラス内での立場は上位に位置する程で、信頼も結構されている。 友達受けがよく、愛想がいい。回りに自然に友人たちが集まり、輪の中心になる。そして何より、話がしやすいのだろう。 恵はそう批評しながらも、密かにこういうタイプは苦手、と毒づいた。 こういうタイプは何気に洞察力が鋭いのだ。恵は例外として、恵が苦手とするタイプだ。 自分の事を探られているようで、あまり良い気分はしない。 そんな心の内を隠しながら、恵は目の前の相手に向き直る。 「そう言えばめぐ君はどうしてこの時期に転入してきたの?珍しいよね、今時の転校って」 降矢は心底不思議そうに恵を見た。 「……え…はあ……何て言ったらいいんですかね」 恵はさりげなく困り顔で、悩む様子を演じた。 「あ、ああ…あまり言いたいことじゃないよね。ごめんね、こんなこと聞いちゃって」 降矢はその様子に気づき、申し訳なさそうに謝ってくる。 恵はいえ、と呟き、この際にと先程から気になっていたことを降矢に聞くことにした。

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