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第8話

「そう言えば先程から気になっていましたが、この妙な視線は何なんでしょうか。……それと……」 そう口を閉じると、右側で机に突っ伏している比々野と言う生徒をちらりと見た。 降矢はああ、と理解したように声を漏らす。 「視線の方は僕のせいだと思う。それと龍…比々野に関してはいつもこんな感じだから」 そう言って降矢はははは、と笑った。 「降矢君のせいとは?」 恵は首を傾げる。 「最初にこのクラスに入ってきたとき、凄い視線感じたでしょ?この学院に転入してくる変わり者なんてどんなやつなのかと、皆気にしてたんだよ。それで気になって話しかけようとしたら俺が先にめぐ君に話しかけるもんだから、手が出せなくなってるんだろうね。しかも、その横には比々野がいるし」 降矢はちらりとクラスメイト達を見て、苦笑ぎみにいった。 恵は尚もよくわからないと言う表情で降矢を見た。 「…この学院、一応日本中の経済特化グループの御曹司とか何処かの国の貴族のの御子息とかが通う名目でいう、エリート進学校だからさ。めぐ君は一般人でしょ?だからこの学院の生徒達にとっては一般人は珍しく見えるんだよ。所謂金持ちしか通えないっていう学校に突如理事長の権限で無理矢理この時期に転入してくる生徒なんて一般人じゃなくても気になるのが道理ってもんだから」 降矢はそう言うと、自分の説明をし始めた。 「ただ、金持ちと言ってもその中には身分差もある。例えば彼処にいる三人組。一番手前と右側の奴は、その横にいる奴の立場上従者ってことになってる。あの家の分家に当たる家の二人は、身分だけで言えば下だからね」 恵は、ふむふむと小さく頷く。それを確認した降矢は尚も説明を続けた。 「日本のトップ企業と言えばめぐ君は何を思い浮かべる?」 咄嗟にそう聞かれ、恵は焦りもせず無表情で即座に答えた。 「世界トップクラスの経済力をもつ有明グループ……と有明グループの現社長の次男が分家と言う名目で作ったグループ、比々……の……」 恵はそこまで言うと、目の前にいる人物を凝視した。 「ま、まぁ、そこまで詳しく言ってくれとは言わないけど、大体当たりだね。僕は一応有明グループ現社長の孫に当たる。父方の方の姓を受け継いでいて、比々野は母方の方から受け継いでる。比々野は有明グループの次男の息子で俺の従弟なんだ」 降矢はそこまで言うと、だから…と言葉を繋げた。 「その辺の企業の子息とかは安易に俺達に声を掛けたりとかはしないんだよ。身分差も激しいしね。比々野もその理由あってか、全く声を掛けられないからああやってずっと寝られてる」 そう言って降矢は肩を竦めた。

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