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第9話
____この学院は身分差が激しい。
以前、クラスメイトで有明グループ会長の孫にあたる降矢にそんなことを告げられてから妙に回りの視線が気になってならなかった。
恵は心底どうでもいいといった顔で教室に入り、席に座る。
真横の比々野___降矢の従弟に当たる生徒を見ても何時もと同じように寝ているだけだった。
ふと恵は思った。
(いくら身分が高くて声を掛けられにくいからって、こんなに四六時中寝てるもんかな……)
恵はすくっと立ち上がると、比々野の席に椅子を近付ける。そして、すとっともう一度椅子に座ると真横___今にも顔がぶつかりそうな近距離で比々野の様子を伺うように覗いた。
「……………」
初めてまともに見た比々野の顔はいかにも御曹司と言うようなオーラがあり、男の俺でもときめいてしまうかのような顔つきだった。
(……まぁ、俺には関係ないけど)
自嘲するようにふと嘲笑うと、恵はまた比々野に視線を戻した。
すると、そんな恵に同調するように比々野の目がパチリと開いた。
「………っ!」
恵は顔が近すぎたと今更ながら気付き衝動で椅子ごと後ろに下がろうとする。
「………あっ…」
ガタリッと言う椅子の音と共に何故か椅子がひっくり返った。
どうやら床の摩擦に耐えきれなくてそのまま恵の体重が掛かってしまったようだ。
恵は人間の反射神経もどうってことないといった顔で、仕方ないと人間ではあり得ないような反応で、手を着くなどの受け身の体制もとらずにその状態を受け入れる。
パシッ
目を瞑ることもなく上を見上げていた恵の腕を誰かが引っ張った。
「…………は?」
そんな間抜けな声を出す前に、ぐいっと腕を引っ張りあげられた。
「………え、何…」
小声で驚きと何で助けた、という皮肉な声も混ぜてその言葉が放たれる。
抱きつくかのような体制になった、恵と恵の腕を引っ張った目の前の人物__比々野はそのままの体制で話始めた。
「えっ………と……」
恵は訳が分からない、といった顔で比々野を見上げた。
元々身長の低い恵はクラス内でも背の高い比々野に並ぶとかなりの差がある。
座高では尚更だったため、見上げる必要があった。
比々野はそんな恵に答えようともせず、見上げてきた恵の顔を見て密かに目を見開いただけだった。
そして少し口を開いた。
「……お前さ、何やってんの?」
恵は初めて聞く比々野の声に戸惑いながら、口を開く。
「いや、…四六時中寝てるもんだから何かあるのか、と……思っ…て覗いてただけ」
恵は真上から見下げられような体制を不快に感じながらも、そう口にした。
「だけって……」
比々野ははぁー、と溜め息をつくと恵の腰を持ち降りるように合図する。
恵は今の状態に気付き慌てて比々野の膝から降りた。
ふと比々野が手を凝視していることに気がついた。
「……何?…怪我でもした?」
たったんなら行きなり問題起こしてしまった、と恵は苦渋の顔になるしかなかったがどうやらそうではなかったようで、
「いや………お前、なんか……ちゃんと食べてる?」
「…………………え?」
間がとてつもなく開いたが何とかその言葉を読みきれた。
比々野は先程もった恵の腰の感触を確かめるように手を見て、それから立っている恵を座ったまま見上げた。
「お前、男だよな?にしてはなんか、細すぎないか?身長が低いっていっても、これは流石に……」
「え……ちょ、ちょっと…」
唐突なそんな言葉と共に俺の体を検査するように立ち上がり、見てくる比々野に恵は困惑しせめてもの抵抗で後ずさりすることしか出来なかった。
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