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第11話

「……何でそれを…俺に…」 恵は、目の前にいる比々野を見上げた。 「言っただろ。お前は俺と同じ感じがするって……」 だから、それがどういう事だって言ってるんだよ、と心の中で毒づくも恵は目の前の男の胸から手が離せない。 ___心臓がない この男はそう言った。 確かに………心臓の音がしないのだ______。 否____心臓はある。けれどこの微妙な……今にも消え入りそうな感覚が見舞われてしょうがない。 「……率直に聞きたい。何で生きてる……?」 恵はいつもならあり得ないような真剣な眼差しで比々野を見上げた。 勿論質問の意図はどうして心臓がこんな状態なのに生きていられる?だった。 「……心臓は実際にはある。ちゃんと動いてもある。………けどあまりにも動きが微妙で常人には心臓が有ることすら分からないんだ」 そして比々野は言葉を続ける。 「小さい頃、病院で気兼ねに検診に行った。何の問題もなく、ただ胸に当てて終わるだけかと思った。けど、医者にこう言われた。」 _____息子さんの心臓は何処にあるんでしょうか、と。 「………い、医者が……?」 どういう事だろうか?今の医学ならいかに動きが微妙だといえ心臓が何処にあるか分からないなんていう事はある筈が………。 「だから言ってる。俺は恵と同類だって」 はっと恵は顔をあげる。 比々野は目の前の恵は見て、クスリと笑った。 そしてこう言うのだ。 「恵………俺のこの壊れた心臓を____」 「俺の壊れた歯車を直してほしい」 ____それができるのは同類のお前だけだと。 正直思った。 こいつは何かおかしい、と。

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