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第12話
__俺の壊れた歯車を直してほしい……?
(……は?どういう……)
恵は目の前で意味不明な発言をする男に困惑した。
「えっと……それはどういう事で…?」
意味がわからないといった顔で恵は目の前の男_比々野を見た。
すると比々野は、あー…と口を漏らすと頭をかきながら見上げた。
「取り敢えず言い方悪かったけどいいよな…?」
ぼそりとそう呟くと比々野は何故か俺の方に向かって歩いてくる。
「…え、ちょっ……」
恵は自分より明らかに背丈がある比々野に圧倒されて思わず壁の方に後ずさりする。
ずかずかと進んでくる比々野に恵は軽く引いていた。
(……何故急に黙る!?)
恵はこの場の妙な危ない雰囲気に、冷や汗を流す。
ぐいっと比々野の顔が近づいてきたと思うと、突如顎を手で捕まれ、無理矢理上を向かされる。
「なっ!?な…んっ……」
言葉を発しようとその口を拡げた瞬間唇を塞がれる。
(こいつっ……なに、やって…!!)
「はぁ、んっ、う…ん、ぅ……は、…や、やめっ…んっ」
制止の声をあげようとするとすかさず唇を塞がれる。
(やばい……頭が…くらくら、してきた)
キスはファーストキスではなかったがついさっき自己紹介を済ませたばかりの、しかも男にキスをされるとは誰も予測できるはずがない。
恵は、本能で尚も濃厚なキスを続けてくる比々野の唇を思いっきり咬んだ。
「………いっ!」
そんな声を密かにあげて比々野は唇を離した。
「…は、はぁっ……はぁ、…は、あ」
恵は紅潮気味の顔に手をあて、いつの間にか壁を背に尻餅をついていた腰をあげた。
「…お前……いきなり、何を…」
「何で噛むんだよ」
は?と一瞬呆れたような顔をした恵に比々野は、赤くなった唇を撫でながら恵を見下げた。
「……逆に言わせてもらうけどこの変態野郎」
恵がそう言うと比々野は目を見開いた。
「は?何…?」
「いや、思ったより口が悪いな、お前」
「余計なお世話だ、変態。いつもは気を遣ってるんだよ」
恵はいつもではあり得ない程毒づいて目の前の人物に吐き捨てるように言った。
「いきなり初対面とほぼ代わらない、しかも同姓に急に襲いかかるなんて頭でも狂ってるの、お前」
(痛覚が無くなってからは何事にも対してあまり興味を持てなかった。けど最近、習得して理解できたのは怒り、とか憎しみっていうやつだった。)
何で今、目の前のこいつにこんなに苛立ちを抱いてしまうんだろうか___?
恵はそう思うと、少し悲しげに笑った。
「……お前、笑えるじゃん」
日比谷はそう言うとクスリと笑った。
「……は?何…?」
日比谷は、だから___と言葉を続けた。
「笑えるじゃん、お前。転入初日は感情がない作り人形みたいな顔で笑ってたけど。今のは違う」
「…何でそんなこと、お前に言われなきゃならない」
恵はどうにも目の前のこの意味不明な言葉を吐く男に、苛立ちが疼いて仕方なかった。
(何でこんなにイライラする?同族嫌悪?……それは理解できてない。何なんだ、意味不明な事を言われて、急にキスされたから…?)
「今のは悲しそうだったけど…」
恵が訳が分からず困惑させながら頭を回転させていると、ふと日比谷が呟く。
恵は自然と伏せていた顔をあげ、続く言葉を耳にした。
「そっちの方が好きだよ、俺は」
日比谷はそう言って懐かしむように笑った。
「なっ……」
恵はどくんっと心臓が動き出すようなそんな感覚に見舞われた。
あり得ない____あり得ない、あり得ない!
頭をフル回転させる。そうだ、あり得ない。
こんな……こんな感情俺には感じれられないはず……。
しかも出会ったばかりの最低な奴に_____。
(何で…?何でこんなに……)
____胸が高鳴る……?
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