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三時間目

勝手に探す、と宣言したものの手がかりなんてほとんどあってないようなもので頭を使うだけで知恵熱が出そうだった。 俺があいつについて知ってることといえば 誕生月と、小さくない身長に好きな色は黒 好きな音楽はインディーズバンド 口は悪いけど字は可愛い。 んでもって意外と律儀っつーか真面目?ってこと いや、あんまし役に立つ情報なくね!? 先生に聞けば一発なんだけど でも、なんか、ほんとそれは嫌! 絶対に自分で見つけたかった。 「おーい、ばか。何頭抱えてんだよ」 「誰が馬鹿だ!見間くんよ、俺は猛烈に悩んでいる最中なんだよ。これこそ人生に1度あるかないかのレベルよ」 「そうか、今日も平和でよかったよ」 「いや聞けよ!もっと俺の話聞いて興味持って!?優しいくせにドライモンスターだよなお前は!」 「はあ、面倒くさ」 「聞こえてますけど!?」 くっそう、この薄情者め! あ!本当にどっか行きやがった! 昔のお前は優しかったんだけどなあ!? って、こんなこと考えてる暇はない。 考えろ〜足りない俺の脳みそ 全勢力を持ってして記憶を掘り起こすんだ…!! そういえば…ちょっと前の会話でハマってる本の話しなかったか? 図書室の本で、俺が活字見てるとじっとしてられなくなるって言ったら 『ばか』ってアイツに言われたような。 なんて本だっけなあ、なんか有名なやつ 外国人作家の、昔の本…? どこからか戻ってきた見間を見つけて叫ぶ。 なんだなんだとクラスの視線を集めるが俺だとわかった瞬間、 みんな「ああ、また日下か」みたいな目をする。 こいつら、まじ腹立つな! 「見間〜!なんか有名な外国の本教えて〜」 「うるさ、急になに、お前本なんか読まないじゃん」 「でも必要だから!」 はあ、とため息をつきながら俺の席の前まで来て教えてくれた。 「有名な本だとそうだな、ハリーとか?」 「それは俺でもしってる!もっと文学!な感じのやつ」 「文学ねえ、あーシェイクスピアとか?」 しぇいく、しぇいく…しぇいくすぴあ!!! 作者さえわかればこっちのもんだ! 今からでも図書室に行って探してやる! 「さんきゅー見間!持つべき友はお前だな!じゃ、俺行くから!」 「はっ?ちょ、瑛司!授業は!?」 「サボる!てきとーによろしく!!」 「はあ!?」 見間が珍しく大きな声を上げているがそんなもの気にしていられない。 廊下を走れば先生に注意されたけどそれも今は無視 早く行かなきゃ、俺の頭はそればかりだった。 しかし、 「いや、まあそうだよな」 図書室の扉には鍵がかかっていた。 まあ、昼休みでもないし空いてるわけもないかー くっそう、後もう少しなのに〜!! 「おい」 図書室の前にしゃがみ込んで あからさまに肩を落として落胆を表していると 後ろから低い声が響いた。 なんだ? 振り向けば自分も声をかけたのが予想外だったのか一瞬しまった、と言う顔をした男 「邪魔だから退け」 「え?あー、わり。でも鍵しまってるよ」 先ほど表情はまるでなかったかのように直ぐに真顔に戻ってしまった。 なんだったんだ? 俺の言葉を無視して扉をガチャガチャと弄り始める。 ん?てかこいつどっかで…… こいつ!!前に俺に舌打ちした野郎じゃん!!! 俺は覚えてるからな〜!!!! 「開いたぞ、なんか用あるんじゃねーの」 「え!?お前スゲーな!ありがとよ!」 単純な俺の脳みそは、怒っていたのも直ぐに忘れて 扉を開けてくれたことに感動し、その手を取ってブンブンと振りながら握手をする。 「マジ助かった!ありがとう!!」 「……手、離せ」 「あ、わりっ!」 男の手なんか握って何しているんだろう 俺、浮かれてんのかな 「なあなあ、なんで鍵開けられたんだ?」 「図書委員は鍵もってる決まりなんだよ。」 「あんた図書委員だったのか!あ、そうだ、じゃあさ、しぇいくすぴあ?の本ってどこにあるかわかる?」 「は?」 図書室に入って早々カウンターの中のソファーに寝そべり始めたそいつに声をかける。 俺はサボりじゃないけど、こいつはサボりに来たのか? 「なんで、」 「知りたい事があるから」 「………右奥端から2番目の棚」 「…!ありがとう!」 沈黙が長かったから教えてくれないのかと思ったけれど 存外こいつも優しくて真面目なやつらしい。 棚の位置まで教えてもらえるとは! 言われた通りに右奥の端から二番目の棚を見る。 し、し、し、あった!しぇいくすぴあ!! って、しぇいくすぴあの本多くないか!? なんか同じタイトルなのに大きいのも小さいサイズのもあるし こっから探すのかー… ちまちま細かい作業とかこういう探したりするの苦手な俺だけど でも、なぜだかこの時はとてもワクワクしていたんだ。

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