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どうにもできない

いきものは食べ物を与えてないのにもう1ヶ月生きている。 病院に連れて行こうとすると逃げて絶対に捕まらない。 いきものは重力を無視して動けて、天井とかに逆さまに座っていられるのだ。 脚もないのに丸いいきものが天井にちょこんと「座って」「走って」いるのはさすがにオレでも何かおかしいとは思う。 手足のない毛玉ないきものの時点でもうおかしかったし、重力も無視ししてるし、何も食べないけど生きてるから確定だ。 「これはいきものではない」ということ。 そして、手のひらサイズから1ヶ月で今ではバスケットボールくらいになってるのもそういうことだ。 でも。 可愛い。 モフモフのふわふわ。 綺麗な目。 何よりオレに懐いてきて。 仕事で疲れきったオレの癒しになっていた。 心が、もう。 何もかもが嫌になりかけてたから。 翠の目。 ふわふわ。 可愛い可愛い 指をしゃぶられるのも相変わらずで、多分それがなんらかの「栄養」になっているんだろうな、と思ったけど、とくに実害がないからもういいや、と。 生気を吸われているという感じでもないし。 細かいことは気にしなくなった。 手のひらサイズの頃から、気がつけば寝ている間に勝手に人の胸の上に登ってきて、そこで自分も寝ていた。 そんないきものを、今では抱きしめてねむっている。 いきものはあたたかくて、心臓の鼓動がした。 ふわふわだった。 この安らぎのためなら、いきものがいきものでなくていい。 そう思ってしまった。 いきものが可愛い、 とても可愛い いきものもオレにまとわりついて離れない。 それが嬉しかった。

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