3 / 8
どうにもできない
いきものは食べ物を与えてないのにもう1ヶ月生きている。
病院に連れて行こうとすると逃げて絶対に捕まらない。
いきものは重力を無視して動けて、天井とかに逆さまに座っていられるのだ。
脚もないのに丸いいきものが天井にちょこんと「座って」「走って」いるのはさすがにオレでも何かおかしいとは思う。
手足のない毛玉ないきものの時点でもうおかしかったし、重力も無視ししてるし、何も食べないけど生きてるから確定だ。
「これはいきものではない」ということ。
そして、手のひらサイズから1ヶ月で今ではバスケットボールくらいになってるのもそういうことだ。
でも。
可愛い。
モフモフのふわふわ。
綺麗な目。
何よりオレに懐いてきて。
仕事で疲れきったオレの癒しになっていた。
心が、もう。
何もかもが嫌になりかけてたから。
翠の目。
ふわふわ。
可愛い可愛い
指をしゃぶられるのも相変わらずで、多分それがなんらかの「栄養」になっているんだろうな、と思ったけど、とくに実害がないからもういいや、と。
生気を吸われているという感じでもないし。
細かいことは気にしなくなった。
手のひらサイズの頃から、気がつけば寝ている間に勝手に人の胸の上に登ってきて、そこで自分も寝ていた。
そんないきものを、今では抱きしめてねむっている。
いきものはあたたかくて、心臓の鼓動がした。
ふわふわだった。
この安らぎのためなら、いきものがいきものでなくていい。
そう思ってしまった。
いきものが可愛い、
とても可愛い
いきものもオレにまとわりついて離れない。
それが嬉しかった。
ともだちにシェアしよう!