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第7話(R18)
「お疲れ様でした」
ベッドに座った雅樹の肩を撫でると、彼は大きく息を吐いた。
「いや、本当にスッキリするし、よく眠れる」
「ありがとうございます」
でも、眠るために来ないでくださいね、と再度釘を刺すと、雅樹は苦笑した。
「何だろう? 先生は本当に、人を癒すために生まれた人ですね」
「何ですかそれ?」
黒兎は笑ってソファーへ促す。雅樹はソファーに座りながら、本当に、と今度は笑った。
「今日は随分プライベートな話をしたので。先生は何でも聞いてくれるって思っちゃうんですよ」
それも仕事のうちですから、と黒兎は微笑む。こういうところは、心がオープンになりやすいんです、と言うと、雅樹はいいや、と首を振った。
「私も仕事柄、色んな人を見てきましたけど、こんな事を話したのは初めてです」
自分で言うのもなんですが、人を見る目はあるんですよ、と言われ、黒兎はグッと息を詰めた。
本当は、そんな大層な人間じゃない。人を癒す事で、自分が人の役に立っていると思っていたいだけだ。そうでもしないと、自分には誰も見向きもしないから。
「……さっきの続き。ゲイじゃないかと噂されていた同級生に、私は酷いことを言いました」
黒兎の肩が震えた。悟られないようにお茶を出すと、自分はペットボトルの水を勢いよく体内に流し込む。
「『自分に被害が及ばなければ、俺には関係ない』と言ったんです。浅はかでした。なのに名前も覚えていないんです」
そのあと男性に恋をして、自分がなんて事を言ってしまったんだ、と後悔したと雅樹は言った。
「実は失恋と、実家からのプレッシャーのダブルパンチだったんです」
情けないですね、と苦笑する雅樹に、黒兎は無意識に近付く。そして、少しカサついた雅樹の唇に、そっと自分のを合わせた。
「それは……辛かったですね」
驚いた顔が目の前にある。それを見て黒兎は、一体何をしているんだ、と一気に心臓が跳ね上がった。でも、もう今更だ。
(踏み込まないと決めてたのに)
自分の自制心の無さに笑える。緊張で引き攣っているかもしれない笑顔を見せると、黒兎は雅樹の股間を撫でた。予想通り慌てた雅樹の、性器のすぐ上、恥骨上部にあるツボを両手の親指で左右同時に押すと、雅樹はビクッと身体を震わせる。
「ちょ、先生!? 何を……っ?」
「木村さんは特別。こっちでも癒してあげます」
やはり雅樹はそっちの方もご無沙汰のようで、すぐに反応を見せた。黒兎が押したのは勃起力を高めるツボで、ここを押すだけでムラムラする人もいるらしいが、雅樹には効果てきめんのようだ。ましてや施術後でリラックスしているので、効果は更に上がる。
「木村さんがプライベートな事を話してくれたので、俺も話しますね」
俺、ゲイなんです、と黒兎は雅樹の硬くなり始めたそこを、唇で食んだ。長年触れたくても触れられなかった雅樹の身体に、黒兎は緊張と興奮を隠せず、手も声も震える。
「丁度いい。俺は木村さんの事タイプだし、俺をその失恋した子だと思って……」
「先生っ、自分が何を言っているか分かってるんですかっ?」
言葉とは裏腹に、雅樹のそこはどんどん熱くなっていく。そして、快感に抗おうと顔を歪める姿に、黒兎はどうしようもなく興奮した。
「大丈夫、木村さんはただ座ってるだけで良いんです」
全部俺がやりますから、と雅樹のいきり立ったものを取り出す。そしてその辺にあったマッサージ用のオイルを取ると、雅樹のそれに塗る。
「ちょ、本気ですかっ?」
黒兎は下着ごとズボンを下ろすと、自分の後ろにもたっぷりと塗り込む。柑橘系のいい匂いがしたけれど、今はそれを楽しんでいる余裕はない。
黒兎は雅樹のズボンを全部取り去り、彼に跨 った。そして自ら慣らすこともなしに、楔を後ろに埋め込んでいく。
「う……っ」
正直、ここを使うのは初めてだ。ここに入れられるのは雅樹だけと、無駄な貞操を守り続けてきたことが、こんな形で叶うとは、と自嘲する。
「せ、先生……っ」
雅樹が興奮なのか、恐怖なのか分からない声を上げる。黒兎は無視し、できるだけ力を抜いて、そこに体重をかけていった。
プツッと音がする。まずい、どこかが切れたのかもしれない。無茶するからだ、と自分の中で冷静な声がした。でも止まれない。
「先生、先生……、ぅ、……っ」
雅樹はうわ言のように黒兎を呼ぶけれど、ソファーを指が白くなるほど強く掴んでいるから、大丈夫だ……多分。顔は見ていないから分からない──見られない。その顔に、少しでも嫌悪が混ざっていたら、黒兎は立ち直れなくなる。
痛み出した後ろを堪えて、黒兎は身体を動かした。
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