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第37話 番外編・黒兎視点(R18)
「んぅ……っ、も、……やだ……っ」
ある日の黒兎の自宅、リビングで。黒兎はソファーに座る雅樹と対面で繋がったまま、悶えていた。
黒兎はじんじんと疼く後ろと、雅樹から与えられる前からの刺激に涙目で恋人を見る。
「嫌かい? そうは見えないけれど」
「もう、……動いて、……動いてよぉ……っ」
黒兎は泣きそうなほどに、高くなった声を上げた。しかし雅樹は余裕の表情で、それをスルーするのだ。
雅樹とのセックスはじっくりな上に粘着質だ。今も、黒兎の赤くなった怒張の先端を指で擦りながら、羽のような力加減で胸を弄られ、黒兎はびくん、と身体を震わせる。少しの刺激で、大袈裟に反応するほど身体は限界に近いのに、雅樹はその状態を楽しんでいるのだ。
「泣きそうになって悶えている黒兎は、そそられるね」
「……っ、そんなこと、言ってない、で……っ」
黒兎は雅樹の肩に回した腕に力を込めると、お願いだから、と彼の耳に囁いた。するとそれはそれは、とろけるような顔で彼は笑う。
「お願い? 黒兎のお願いは、今叶えているじゃないか」
何が不満なんだい? と雅樹は黒兎の先端を指で擦り続けた。悲鳴のような声とともに腰が勝手にうねって、それが結果的に僅かながら抽挿しているようになっている。
黒兎の内ももが震え出した。この感覚は、と思ったら、次の瞬間には先端から透明な液体が飛び出し、フェイクレザーのソファーと雅樹を濡らしていく。
「──あっ! ……は、……あぁ……っ」
そしてその快感に悶えている間、雅樹はじっと黒兎の顔を見つめるのだ。
「またイッちゃったのかい?」
からかうような声がして、黒兎は首を振る。これはイッていない。黒兎はまだ射精はしていないのだ。この、苦しいほどの快感に意識が朦朧とし始めてようやく、雅樹は射精することを許してくれる。
この、ギリギリまで責められるのが、とてつもなく快 い。
雅樹との『特別メニュー』の時には味わえなかったそれに、黒兎はまた悶え、喘ぎ、意識を飛ばす。
「黒兎、イッてるの?」
黒兎の様子に気付いた雅樹の声が、僅かに上擦った。彼は黒兎が悶えて苦しむほど燃えるらしく、後ろの怒張がヒクヒクと動くのが分かる。
「──ッ、ん……っ!」
絶頂が通り過ぎて雅樹を見ると、彼は微笑みながら黒兎の口元を指で拭った。開きっぱなしの唇から涎 が垂れていたらしい。
「ああ……もっときみの顔を汚したい。この腕に閉じ込めて、逃げられないようにして、私にしか見せない顔をもっと見せてくれないかい?」
そう言って突き上げられて、目の前に星が飛んだ。羞恥心と快感と嬉しさで涙が溢れ出て、またすぐに絶頂してしまう。
もう声も上げられなかった。苦しくて苦しくて──でもそれが雅樹の愛の重さだと知ったら、その苦しささえも快感に変換される。
「ま、……まさ、き……っ」
辛うじて名前を呼ぶと、一層抽挿が激しくなる。雅樹の息遣い、彼の上気した頬、熱を隠しきれなくなった瞳に下から聞こえる濡れたような音。黒兎はそれらを意識してしまい、またあっという間に絶頂し、今度はとうとう白濁した液体を吐き出してしまう。
しかし雅樹はお構いなしに腰を動かしていた。黒兎の先端からは、まだ断続的に精液が飛び出していて、むり、こわれる、と舌っ足らずな声で叫ぶ。
「壊れたら、私が一生面倒を見てあげる……」
そんなことを言う雅樹。雅樹もきっと、どこか壊れているのかもしれない、と黒兎は思うけれど、それで喜んでいる黒兎もどこか壊れている。お互い依存的に相手を好いているように見えるから、それはそれで良いのかもしれない。
二人で一緒に果てた後は、貪るようにキスをした。ずっと見ているだけだった雅樹に触れられて、愛されて、他にはもう何もいらないと熱に浮かされた頭で呟く。
「黒兎……、愛してる」
雅樹の呟きに黒兎はうっとりと頷き、意識を失うように眠りに落ちた。
(番外編 おわり)
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