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第6話
翌朝、パタパタと走る二つの足音を聞く。
目を開けたいが、重くて開かないのは、
昨日泣きすぎて腫れているのかもと、
リーラはぼんやり思う。
「あー、ここにいた」
「なんでこんな狭いとこにいるの?」
昨日は涙が止まらないリーラを、ランディはオロオロしながらソファに座らせ、そのまま抱き抱えて寝てしまった。
ランディの体温は高く、朝まで気持ちよく、
ぐっすりと眠っていたリーラは、双子の声でハッとし起きる。ランディは、まだリーラを
すっぽりと抱え寝ていた。
「ランディ、起きて!ベッドにいないから帰っちゃったと思った」
「朝から悲しくなっちゃったよ」
寝起きのランディは双子に攻撃されても
「ああ、ごめんな。リーラを抱っこしたら眠くなってここで寝ちゃったんだ」
と機嫌良く答えているが、その腕はまだリーラを離していなく抱きしめたままだ。リーラは
恥ずかしくて顔を真っ赤にしていた。
「よし、朝から元気になったから庭に行って
野菜でも取るか」
「「行くー!」」
三人は元気に出て行ったが、リーラはなぜか心臓がドキドキしていた。
さて朝食の準備をするかと、キッチンに向かったリーラに、今出て行ったばかりの男が真剣な顔で戻ってきた。
「リーラ、すぐに来て欲しい」
微かな不安を感じ駆け出して行くと、ランディは続けて言う。
「ネロとアルが山から声がすると言っている。また鉄砲水が来るかも知れない」
リーラが大地に手をかざす。
「ネロ、アル、裏のルキおじさんのとこ行って。すぐにみんなを避難させて。僕はクルットさんの所に行ってから避難場所行くから、ランディも先に行って」
ネロとアルが走り出したのを横目で見て、リーラはクルット婆さんを乗せる車椅子を出そうとするが、その手をランディに止められる。
「俺が行く。リーラもクルットさんも連れて行く」
ランディがクルット婆さんをおぶり、リーラの手を引き避難所まで走る。
避難場所にはみんな既に集まっていた。
皆が不安そうにしている中、ランディだけは難しい顔をして山を眺めている。
「もう、終わらそう。君たちの力を貸してくれないか」
そう言ってランディは、リーラとネロ、アルに向き合った。
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