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第8話

意外とたくさん体力を使ったのだろうか、リーラはウトウトとし、目覚めた時は昼をすっかり越えていた。あのまま数時間寝てしまっていたのだろう。 リーラは起き上がり、双子の姿を探すも家の中には誰もいなく見つからない。 隣のクルット婆さんが心配になり、家のドアを開けた時、人影が揺れたような気がした。 (もしかして…見つかったかも) 役人のような姿が目の端に映る。 この能力がある限り逃げなくちゃならない。 せっかくランディに会えたのに離れなくちゃとリーラは焦り始める。 「ただいまぁ」と三人が帰ってきた声が玄関から聞こえた。 「来ちゃダメ、逃げてランディ。このままじゃ僕と一緒に捕まっちゃう。お願い今からすぐ逃げて」 「おい、どうした。リーラ」 「今、外に国の役人みたいな人がいると思う。僕はこのまま連れて行かれるんだ。だからその前にランディは逃げて、お願い」 焦るリーラを抱きしめてランディは言う。 「大丈夫だ、俺が守ると言っただろ」 「違う!ダメなの!この国の王様に捕まったら何されるかわかんないんだよ」 「は?この国の王って…なんだ、そんな酷いことするのか?」 「そうだってば!野蛮で自分勝手な人だってみんな噂してるもん。王様の側近なんて、どんどん痩せていっちゃうんだって。だから何されるかわかんないの、ランディだけはお願い逃げて」 ランディはなぜか天井を見上げている。 「…いやぁ…リーラ、そんなに悪い奴じゃないと思うぞ。王様って」 「もう、なんでこんな時にそんなに呑気なの!あ、これ持っていって。塗り薬だから、あなたすぐに傷だらけになるでしょ。怪我したらこれ傷口に塗って。それと、これも。また大きな怪我したらこれ飲んで。苦いけどよく効くから。それから…」 リーラは涙目になっていく。 毎日過ごしていたランディと離れ離れになることが辛いと感じている。本当はこのまま一緒に逃げて欲しい気持ちと、迷惑かけられないから早くひとりで逃げて欲しい気持ちが、ごちゃ混ぜになる。その間、ランディはリーラを抱きしめたまま離さない。双子は二人の間で泣きそうな顔をしてジッと立っている。 「リーラ…大丈夫だ」 「大丈夫じゃない…」 とうとうリーラは泣き出してしまったその時、ドアがノックされた。 「失礼いたします。ランドルフ陛下」 ランディは舌打ちしながらドアを開けた 「もう少し待ってろって言っただろ」 国の役人だろう人達が、リーラの家の中に入ってきた。 「この人は関係ありません。僕が行きますから、この人は逃してくださいお願いします」 焦っているリーラはランディをひたすら庇う。涙は止まらない。 役人達は呆気に取られた顔をしている。 「リーラ落ち着け。ネロ、アルこっちこい、ここ座れ。リーラはこっちな、ここ座って」 ソファに座るランディは、リーラを膝の上に、ネロとアルを両端に座らせた。リーラはまだ興奮状態のため、ランディが抱きしめたまま、 ネロとアルに話を始める。 「いいか、俺の話をよく聞いて欲しい。 この人達はお前らじゃなく、俺を探してここに来ている。捕まえようとしてるんじゃない。俺はお前らと一緒にこれからも暮らしていきたいがそのためには、この人達と一緒に帰らなくちゃいけないんだ。おまえら俺と一緒に来てくれるか?わかるか?」 「ランディ…僕達と一緒にいる?」 「朝、いなくならない?」 「大丈夫だ。朝も夜もずっと一緒にいられるぞ」 「この人達、悪い人じゃないの?」 「ネロ、大丈夫だ。俺の知り合いだからな」 「そしたら僕達一緒に行っていいよ」 「ありがとうな、アル」 ランディは改めてリーラと向き合う。 「リーラ、隠していたようですまなかった。 俺と一緒に来て欲しい。これからも俺が君たちを守るから、酷いことはしない。約束する」 さっきランディは、陛下と呼ばれていた気がする。 何が起こっているのか、まだリーラはわからない。思考停止とはこういうことだろうか。 「ランドルフ陛下、そろそろお時間です」 「わかった。今行く」 そう言ってランディは頷き、双子達に確認をする。 「ネロ、アル。今からここを離れる。何か持っていく物あるか?」 「ないよ。お菓子は食べちゃったし」 「僕もないよ」 「そうか、リーラはどうだ?必要な物、持っていく物あるか?」 元々、なにも持たずにこの土地に来たのだから必要な物は何も無い。 「あ、帽子…」 ランディがくれた舞踏会で被るような帽子をリーラは思い出した。 ランディは嬉しそうに、帽子を取ってリーラに被せた。

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