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第9話
外に出ると村中の人がリーラの家の前に集まっていた。王宮から王の側近や騎士らが多く来ていたので、皆は何事だと思ったようだ。
王の側近であろう二人が、村人達に説明をしている。今後は、山からの水で被害が出ないようにすること。この村にお医者様を迎えること。リーラが育てている薬草はたくさんの人に引き続き育ててもらうことを約束した。
それと、あそこにいるのは、我エドワマーク王国の王、ランドルフ・スカー・リオーノ・エドワマーク陛下だということも。
国王陛下であるランディが集まっている人々に向けて話し始めると、水を打ったように静まり返った。
「この村の豊かさ、自然の大きさ、人々の素晴らしさを教えてくれてありがとう。私はこの村の繁栄を約束する。
だが…すまないがリーラとネロ、アルは連れて行く。許して欲しい」
ランディが国王だとわかり、村人からは驚きと喜びの声が湧き上がる。この国の王は勇ましく、大胆でとても有能であると、ここにいる全員が感じていた。頭脳明晰な男だとランディを知っている人々は誇りに思う。安心し、この国を彼に任せられると感じているからだ。
「ネロ、アル。こっちは宰相のクリオス と、騎士団長のレオンだ。俺の親友だから安心しろ、二人の馬に乗せてもらえ。俺とリーラはライズに乗る」
宰相と騎士団長は、双子を抱き抱えてそれぞれの馬に乗る。初めて馬に乗り二人は楽しそうにしている。
リーラはランディと一緒にライズに乗った。馬の背中は高く、遠くまでよく見えるなとリーラは思っていた。
クルット婆さんとルキおじさんがリーラと双子に声をかける。
「リーラ…身体に気をつけて」
「ネロ、アル元気でな」
「「うん」」
元気な双子の声が聞こえた。
後ろから抱き抱えられ、リーラは全身をランディに預ける格好となってしまった。初めて馬に乗るためどうにも身動きが出来ずにいた。そのまましばらく馬に乗っていると冷静になり、自分は今、国王陛下と一緒にいるという状況が把握できてきた。
「あの…ランドルフ陛下…」
「おい…いきなりそれはないだろ。今までと同じくランディと呼べよ。俺に近い人間はみんなそう呼ぶぞ」
「さすがに…それは…失礼なので…」
おずおずと声が小さくなっていく。
「ダメだ、認めん。俺は野蛮で自分勝手なんだ。だから却下する。今までと同じ呼び方、今までと同じ態度にすること。変えるなよ?」
クククっと笑いながらランディはリーラに話しかけた。
「す、すいません…本人だとは知らず」
「まあな…当たってるところもあるかもしれん。だけどなぁ…」
ランディはリーラの肩に顔を乗せて、プクッと頬を膨らませ拗ねている。いつものランディだ。こんな顔を見せられたら、笑ってしまい緊張していたリーラの心が解れていく。
「王と隠していてすまなかった」
笑顔でリーラを見つめていた。
干からびていた川が見えてきた。
「ここでちょっと休憩だ」
ランディの合図で全員が止まった。
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