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第10話
ランディはリーラの手を引き、ネロとアルを呼び四人で小高い丘から川を眺める。
「この川は干からびていて、水が入っていなかっただろ?お前たちの力で、山からの鉄砲水をここに引くことができた。見えるか?」
ランディはそう言い、ネロを抱き上げ肩に乗せる。
「この川の水が田畑を潤す。そうすると作物が豊富になる。この先にずっと川の水が流れて行くのが見えるよな。だけどな、そのずっと向こうは水が止まってしまうところもある」
ネロを下ろし、今度はアルを抱き上げ肩に乗せ川の先を見せる。
「もし、川の水が途中で止まってしまったらどうなる?」
「川の水が溢れちゃう?それと…うーんっと、水がないところは乾いちゃう?」
アルが答える。
「そうだ。アル、よくわかったな。溢れてしまうのも、乾き上がるのも、どっちも困るよな。」
アルは褒められて嬉しそうにしている。
雨水はこの山に溜まり、水を豊富に蓄える。水は排出する方法が無いため、鉄砲水となって時折大量に出てしまい村に被害を与えた。その水に路を作ってあげれば上手く収まるだろう。干からびていた川に山からの水を流したことによって、川には水が戻り潤っている。
だけど、この先にも問題はあるとランディは言う。水路をたくさん作りどこの川も氾濫しないように、どこの田畑も水が潤うように、国全体が人々が安心して暮らせるようにしなければと言う。
山は大きく水も溜まりやすい。それであれば、もっと別の場所に流す必要が出てくるとランディは考える。そうすれば、鉄砲水も無くなり、川の氾濫も抑え、川や田畑は潤い、そして人々を救うことができる。
意識を無くしてリーラの家の前で倒れていた時、ランディはひとりでこの山を偵察に来ていたという。干からびている川、田畑に流す水、人々の暮らしなど国王として国の問題を解決するために、常に単独で行動していたようだ。
「俺の手助けをして欲しい。お願いできるだろうか」
「僕、ランディみたいになりたい…」
「僕も、ランディみたいに考えたい」
真剣な顔で川を眺めている双子を、ランディは抱きしめている。この国の王は国民のことを、国のことを常に考えている。その男の役に立つことができるのであれば、嬉しく、誇りに思うことこの上ない。何とか力になりたいとリーラは考え始めていた。
「それとな、俺は寂しいから一緒に寝てくれるとありがたい」
双子の顔がパァっと笑顔になる。
「いいよ!今日から一緒?」
「ランディ大きいからベッドも大きい?」
「ああ、毎日一緒だぞ。ベッドはすごく大きいから驚くなよ。リーラも一緒に寝てくれるか?」
突然、矛先がこちらに向かって驚く。
「へっ?僕も?えっ…どうだろ。四人は流石に厳しくないですか?僕はどこでも大丈夫です。寝るところは…」
「ダメだ、一緒じゃないと。なあ、寝られないよな?みんな一緒がいいもんな」
ランディはネロとアルに同意を求める。
「そうだよ、今までもそうだったでしょ。一緒がいいよ」
「一緒に寝よう、リーラ。ランディのベッド大きいって言ってるよ」
「うっ…そう言われると…」
双子にも言われると、断る理由は見つからない。
「陛下、そろそろ行きましょう」
後ろから声がかかる。
「わかった。城までは駆け抜けるぞ。ちゃんと馬に捕まってろよ」
頼もしい王の声が聞こえた。
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