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第14話

「もう…何度言ったらわかるの。部屋の中は、ダメって言ってるでしょ」 双子の力を隠さず過ごしてから、王宮の中で働いている人達には、ほぼ知れ渡っている。最初は物珍しさからか、双子見たさに人が集まってきていたが、今ではもうすっかり日常となり誰も気にしなくなっていた。双子はみんなから特に怖がられたり、嫌わせたりもせず過ごしている。ランディの言っていた通りだった。 この力について悩んでいた日々はなんだったのだろうかとリーラは思う。だがそれも、ここで生活出来ているからだということもわかっている。 ネロとアルは、『双子の遊び』をリーラの前でやっていいとわかった後は、頻繁に水を丸め宙に浮かせている。それを、 今日も部屋の中でもやってしまい、リーラに叱られていた。 「部屋が水浸しになるでしょ。ダメ。今すぐに片付けなさい」 「「…はい」」 「リーラは怒ってもかわいいな」 ベッドで横になっているランディが、ニヤニヤと笑いながら言うので、リーラは咎めるような視線を送る。 「どこでもやっていいわけじゃありません。ここは寝室です。水浸しで寝られなくなるでしょう」 「リスの形が出来たんだよ。リーラにあげようかと思って…」 「リーラに似てるでしょ?リスさん」 アルとネロは、リーラを喜ばすために作ったようだ。 「そっか…ありがとう。だけど、お部屋の中だと朝には割れちゃうから水浸しになるでしょ?だからこの遊びはお部屋の中じゃなく、外がいいな。わかった?」 「「はい。わかりました」」 素直な双子に思わず笑ってしまう。 「よし、じゃあ今日は俺が真ん中でいいな。おまえら叱られたから端な」 「えーっ、今日はリーラを真ん中にしてよ」 「叱られた日にリーラと離れるのはやだよ」 相変わらず寝る場所で揉めている。 「なんだよ、いつまでも俺は端なのかよ。仕方ない、じゃあ今日の真ん中はリーラだな。そういえば、リーラ。婆さんの(かご)だけど、一度見に行くか」 噴水の前で双子の遊びを見せた後、ランディはリーラに伝えたことがあった。 この力を使い、枯れた土地に水を撒きたい、水を移動させたいというのだ。 枯れた土地に水を持って行き、山からの水も引き入れるという計画だった。葡萄や果物が十分育たない土地に、新しく水を貼り、水不足、水捌けの問題を一気に解決しようとしている。 双子が作る水のボールは大きさも形も自由自在に作ることができ、浮き上がらせることも出来る。ただ、大量の水を長距離移動をすることが難しかった。 それならば、水のボールを籠に入れて移動させるのはどうだろうかと、リーラは考えをランディに伝えた。リーラは村で暮らしていた時に、クルット婆さんが編んでいた籠を思い出す。 リーラが作る薬草の中で、つるがしっかりしている草があり、村ではそれを使い収納籠を婆さん達が編んでいたのだ。 耐久性に優れていて水にも強いので、村ではみんなが使っている物だった。 「あの草は村にたくさん生えています。凄く便利なんです」 「明日から少し時間があるから、早速行ってみるか。久しぶりにライズに乗り二人で行くとしよう」 「はい、お願いします。みんな元気かな、本当に久しぶりですね」 いつの間にか双子は寝ていた。 いつもランディは隣にいる双子を抱きしめながら寝ているので、今日は自然とリーラを後ろから抱きしめている。毎日の習慣になっているのだろうか。ただ、リーラは後ろから抱きしめられることは初めてであり、耳元で話を続けるランディの声が少しくすぐったく、首を窄めた。 「なんだ…どうした」 いつもより甘い声で囁かれた気がする。 「フフ…ちょっとくすぐったい」 リーラも無意識に甘えた声が出てしまった。 ベッドの中では薄手の寝衣でいるため、ランディの身体を直接感じてしまう。 抱えられている逞しい腕に、トクンと胸の奥が疼くのをリーラは感じ、思わずランディの腕をそっと引き寄せてしまった。 「寒いか?」 「ううん。大丈夫です…」 抱きしめる手を緩めることをせず、ランディはリーラを後ろから抱え直す。 更に身体は密着し、熱くなる。 「こうすると、落ち着くか?」 「そうですね…安心します」 「安心か…それも微妙だけど、まあいいか…明日は泊まりになるかもしれないから、準備しておいて欲しい」 「わかりました」 明日、村に帰る。 二人でライズに乗り村に行く。

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