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第19話
王宮に帰ると大臣が出迎えていた。
リーラと一緒なので予定通りに帰ってきたと言ってホッとしている。
今までランディにどれほど手を焼いていたのかは、なんとなく想像がつく。最近は、リーラが薬草で作ったジュースをよく飲んでいるので、顔色も良く健康的になってると言っていた。またジュースにして、大臣に渡しておこうとリーラは強く心に誓う。
大臣とネロ、アルそして宰相のクリオス、騎士団長のレオンと集まり、村から持ち帰ってきた籠を開けることにした。水が籠の中に残っていれば成功と言える。
籠の蓋をそっとリーラが開いてみると、
水のボールはぷよぷよと収まっていた。
その場にいる全員が歓喜する。
「成功だな。次の準備に取り掛かろう」
ランディが指示を出すその隣で、双子が複雑な顔をしていた。
「おい。どうした?」
「なんか、すっごい喋ってるの、水」
「風もだよ。いっぱい喋るから…もう」
「なんだ?何て言ってるんだ?」
どうしたのだろう、無事計画通りに進んでるのに、何か問題があるのだろうかと
大人達は双子の言葉に耳を傾けた。
複雑な顔のまま、大人しく水と風の声を聞いた二人は顔を上げて尋ねる。
「ねぇ、リーラ。昨日なんかあったの?ずっと夜の間、ガタガタ揺らされてて大変だったって言ってる」
「うるさかったって言ってる。笑ったり、泣いたり?してたって。それで、すっごい揺らされてたって言ってる」
ランディとリーラは忘れていた。ネロとアルは水と風の声が聞こえることを。
昨日、水のボールが入った籠はベッド横に置いていた。ランディとリーラが睦み合う度にベッドが大きく揺れるので、籠にも伝わり、その中の水は大きく揺れていたのだろう。
リーラは真っ赤になり俯く。ランディは腕を組み天を見つめる。心当たりがあり過ぎるのだ。
「いやぁ…特に何もなかったが」
ランディは言い、リーラはコクコクと頷く。
「だって言ってるもん。水が!リーラって呼ぶ声がうるさかったって。何やってたの?僕達に内緒でどこか楽しいところに行ってたんでしょ!」
「どこ行ってたの?朝までずっと楽しそうだったって風が言ってる!」
それ以上具体的に言わないで欲しい。
「あ、あ、そうだ。この水のボールを庭園に放つんでしたよね?それが出来て本当に成功でしたもんね」
「お、おう、そうだ。やろう。今から持って行って放そう」
怪訝な顔をする全員を前に、ランディとリーラは慌てふためいて籠に蓋をし、周りに聞こえないよう小声で水と風に呟く。
「ごめんね…」
「すまなかった…」
庭園に籠を置くと、アルが風を使い
遠くまで飛ばし弾けさせた。
水も元気に弾け飛んだ。庭園の遠くにキラキラと水飛沫が上がっている。
これで本当に成功だと言えるだろう。
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