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第24話
翌日から、果物の出来が悪い土地、いわゆる枯れた土地へ、新しい水を放つ計画が具体的に動き出した。その土地は水の流れが悪いため、新しい水を入れ浸透させる必要があった。
ネロが水をまるめて作るボールを、クルット婆さんが作る籠に入れて運び、その土地に放つことになる。
ただ、このやり方だけでは水は足りず、一時凌ぎになってしまうため、水を放つのとは別に、山からも水を引く必要もあった。
問題は山積みであるとリーラは感じていたが、皆、飄々と解決していく。
水を入れた籠は荷馬車で移動させることになった。籠が大きいと運べる水の量は増えるが、荷馬車に積める大きさ重さにしなければ、運ぶことは出来なくなる。
となると、籠の大きさは限られてくる。それがわかった騎士団達は、毎日試行錯誤し、どのようにしていかに多くの水を運ぶか考えていたという。馬に負担をかけず、荷馬車から、荷上げ、荷下ろしの訓練を騎士全体で行っていた。
ネロとレオンは、荷馬車で村に出向き、クルット婆さん達にお願いして、ちょうどいい大きさの籠を沢山作ってもらい、更に、風が吹いた時、籠の蓋が取れやすくなるようにしてねと、追加で注文も付けていたという。こうすることで、地面に置いた籠は一晩風に吹かれれば、自然に水を放つことになるだろう。
「これで、水をボールにして持っていくことは出来るよ!問題ないからね」とネロは頼もしく言った。
もう一つの問題は、籠本体だ。ネロがクルット婆さんにお願いし、今では村人全員で籠を作ってくれている。籠を大量につくる『つる』は十分あり問題はない。
ただ、水を入れた後の籠は数日しかもたず、また一度水が入った籠はふやけてしまい二度は使えなかった。
アルとクリオスで考えたことを伝えられる。籠本体に水と風を覆うように吹きかけておけば、籠は水を入れても長持ちするという。クリオスを中心に何度も試してやってみた結果、出来上がった籠は、「一週間は余裕で水は漏れません」とクリオスは言った。
ネロとアルの協力で出来た籠は、現地で風を起こせば、すぐにバラけ、地面に草となり広がる。
水が一晩で自然に土に浸透すると同時に草も土に吸収される。この草は水を浄化する働きをもっているらしく、その成分などがバランス良く溶け出すことにより、水を循環させ大地を甦らせることが出来ることもわかったようだった。
「だから、夜のうちに水も草も土に還るんだよ!クリオスとやってみたんだ。そしたらちゃんと計算通りできたよ」
とアルに言われた。
「すごい…」
この短い期間で双子はこんなにも大きく成長していたのかと、リーラは驚いて返す言葉もない。
これを一週間繰り返していれば、枯れた大地は潤すだろう。水捌けを良くし、流してまた貯める、古い水は流してやろうと。
「対策としては、そう報告を受けていたな。ありがとうネロ、アル。では、その後の話をする」
ランディが机の上に地図を広げ、川に沿って指を刺す。
「ここの川は、今以上水が増えると溢れてしまう。多分、次に大雨が来れば溢れ出るだろう。ただ、ここを2つに分けてやれば、溢れる心配はなくなる」
川の途中に新しい路を作り、東と西に分けて水を流すという。西側すぐそばにはあの枯れた土地の畑があるので、そこに流すことができれば、水を引く問題も同時に解決する。
川の路を新しく作るなんて、そんなことができるのだろうか。スケールが大き過ぎてリーラは驚くばかりであるが、
目の前にいるこの国の王はやり遂げようとしている。
アルやネロ、そしてランディの壮大な計画を聞き、応援したい気持ちが湧き上がってくる。更にランディは続けて言った。
「川の氾濫や渇水は、人々の生活を大きく困らせるものだ。俺はこの国と国民を救いたい」
新しく川の流れを変えるためには、多くの人の手が必要になる。町中の人に伝え、既に川の増設作業は着工しているとランディは言っていた。
聡明な王の顔に惚れ惚れとする。
「リーラ、ランディかっこいいね」
ネロとアルに、こっそりと言われ、
「本当に…かっこいいよね」とリーラは呟いた。
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