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第28話
早朝、ベッドを抜け出してキッチンに行こうとするリーラをランディが引き止めた。
「リーラ…どこへ行く」
「えっ?キッチンですけど。皆さんの朝食を作る手伝いをしてきます」
双子はまだ寝ているので、お互い小声で会話をする。
「じゃあ…俺も、」
「ダメ」
俺も行くは無しですとリーラはキッパリ言いながら、さっさと着替えをする。
「国王陛下がキッチンに行くとみんな驚くでしょう。ご飯を作る量が多くて大変だから少し手伝うんです。僕は力仕事出来ないから。ランディはネロとアルをお願いします。ね、」
最後は言い聞かせる口調になってしまった。
テントから出ようとした時に、後ろ手を引かれて素早くキスをされる。
「わかった。後でな」
寝起きで無精ひげをちくりとさせるランディは、朝から色香を振り撒いてくる。
ドキドキとしながらリーラはキッチンに向かうことになった。
もう既にキッチンでは多くの人が仕事を始めていた。
「おはようございます」
リーラがみんなに挨拶をすると、
「おはよう…」と言いながら全員一斉に出入口を見る。リーラの後ろに誰か着いて来ていないか確認をしてるのだった。
「大丈夫です。僕だけですから…」
皆が安堵しているがわかるので、リーラは思わず苦笑いをする。
「まぁな、ドッキドキするよな、国王陛下が来たら」
「ましてや、皿洗いするとか言われると…させるわけにはいかないし、絶対」
「いや、もう、皿洗いなんて恐ろしい」
手を動かしながら、ぼそぼそと皆が昨日のランディの様子を話し出す。
「まぁ…そう、ですよね…」
下を向いて野菜を洗っていたリーラが顔を上げた時、全員がこっちを向いており目が合う。
「リーラ大変だな」
「うん、本当」
「頑張れ、おれは応援する」
「猛獣使いっていうか、何ていうか」
なんとも言えない顔をして、口々に言うがその言葉全ては、リーラを心配して言っているのがわかる。
「だ、大丈夫ですよ。もうキッチンに来ないように言ってありますし…僕はここの手伝いがしたいので…」
「人は足りないから手伝ってくれるのは助かる。ありがとうなリーラ、ただ無理はしなくていいからな」と、料理長に言われ、とりあえずホッとした。
朝食後に昨日、籠を置いた場所へ行った。見事予定通り籠が壊れて、籠は草に戻り地面に散らばっている。
今日もこの上にまた昨日と同じように、水のボールが入った籠を置き、一晩かけて水を浸透させる。昼過ぎには、今日放つ分の水を乗せた荷馬車が到着する。
「じゃあ、僕はレオンと行くね」
呆気なくネロが言うので、リーラはネロを抱きしめる。少し背が伸びたような気がした。
「ランディ!リーラをよろしくね」
レオンと一緒の馬に乗り、元気に挨拶をしたネロは駆けて行った。
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