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第29話
ネロが城に戻り、水のボールをたくさん作り出してくれているので、順調に水を運ぶことが出来ている。
アルは毎日、夜の間に水を放つようにと風に話をしてくれている。
そのお陰で、枯れた土地にも潤いが戻りつつある。
何度も水を放ち、枯れた土地に潤いが戻ってきたところで、そろそろ次の段階に進むことをランディは決断した。
「リーラ、大地の鼓動を教えてくれ。どうだろうか」
大地に手を置き、リーラは鼓動を確認する。ぽこぽこと土の中から元気な音が聞こえる。今までのようなキシキシと痛むような感じは、もう無くなっていた。
「ランディ!大丈夫みたい。すごく元気な音が聞こえてきます」
こんなにも元気になった大地に嬉しくなり、リーラの声もはずむ。
その日の夜、国王陛下として全体を集め次なる計画を伝えた。
「明日、次の計画に向けて実行する。新しい路を増築している川に向かい、東西に分かれて流れるように促す」
既に、川の流れを変える準備は出来ていると聞いている。ここにいる者は川に向かう者と、王宮に帰る者と二手に分かれる予定だった。
「ここから川に向かう者は、そこでも数日かかり作業を行うことになるが、それもあと少しだ」
そう笑顔で言うランディは、みんなを魅了していく。国王が、国民の目線で物事を見て判断している姿に心を打たれる。
リーラも更にランディに惹かれていくのを強く感じていた。双子にも自分にも真摯的に向き合ってくれている。国の問題も、隠すことはせず、解決するために考え、素早く対応をしているランディを見ていて、胸が熱くなり抑えきれない思いが溢れてくる。
こんなにも器が大きく魅力的な男だから、誰からも惹かれていると思うと、
嬉しくもあった。
夜ベッドではリーラ、アル、ランディの三人で寝ていた。四人で寝る時は毎回場所の取り合いがあるが、三人だとそれもせず、毎日同じ場所で寝起きとなる。
アルはネロがいないと、少し寂しそうだ
「明日ね、僕はクリオスと一緒にお城に帰るね。リーラとランディは川に行くでしょう?」
ランディにもクリオスにも言われていたから、アルが一足先に帰るのはわかってはいた。
「寂しい…」「俺も」
と、リーラとランディは両方からアルを抱きしめるとキャッキャと声を上げて喜んでいたが、くるりとランディの方を向いて真剣に伝える。
「リーラをお願いね、ランディ」
そう言うとさっさと寝る準備をしている。
「あのさ、ネロも帰る時同じようなこと言ってたけど、なんで二人ともランディに僕のことお願いするわけ?」
リーラはよくわからなかった。なんで二人がランディに自分のことをお願いするのだろうか、お願いってなんだろうか。
「だって、リーラは僕達のことを心配ばっかりしてるでしょ。そんなに心配することないのに。だからリーラを不安にさせないようにしてって、ランディにお願いしてるの」
「うっ…そうか。アルとネロはちょっと大人になったもんね。これからはそう思って僕も接するよ。ありがとう」
アルは言葉ではそういうものの、頭を撫でてあげると嫌がらず、嬉しそうにするのを見て少し安心する。
「それと、ランディ。僕もネロもランディ以外はイヤだから、ね!」
「お前らよくわかってるな。その辺は任せろ、俺も頑張っているんだ」
ランディ以外はイヤだからの意味もわからなければ、ランディが何を頑張っているのかもリーラにはわからず、二人が楽しそうに話をしているのを、ただ眺めている。
「すぐ城に帰るから待っててくれよ」
「うん」
明日からは川に向かう。
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