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第31話
川が途中でとまっているところまで辿り着き、川の新路を作る大隊達と合流した。
いよいよ、ここから川を東西に分かれるように流すことになる。
到着して早々ランディは川の周りを確認し、作業指揮官の話を聞きに行くなど忙しくしていた。ここをまとめている大隊達の人数も多いことから、川を分散する作業は大掛かりなのもので、苦労が多くあっただろうと想像がつく。それでも笑顔で国王陛下を迎え入れているのを見ると、皆この川の分散作業に誇りに思って行っていたのを強く感じた。
「ここまで大きな分散作業をしてくれて感謝する。水の量もそれほど多くない。今が川を分けてやる時だと感じる。
明日の朝、開始したい」
全体に向けてランディが伝えると、
多くの歓声が上がった。
それを見ていたリーラは胸が熱くなる。
歴史的な瞬間と言ってもいいだろう。
自然災害は、国の問題としても大きなところがある。水が豊富なこの国だからこそ、干上がる土地があればなんとか改善しようとしている。国民の小さな声を無視することなく拾い上げ、人々の生活を救おうとしているランディの姿は頼れる王そのものだった。
枯れた土地に水を放ち、今このように国王陛下自らがその地に出向き、考え行動する姿に、皆惚れ惚れし感謝しているのをリーラは眺めていた。
今夜はここにまたテントを張り滞在することになった。ランディはリーラの手を引き、国王陛下のテントへと連れて行った。
「あれ?ランディこんなところに傷が出来てます。ちょっと待って、えーっと薬があったはず…」
新しい傷が腕に出来ていた。恐らく、川に偵察に行った時にできたのだろう。
さほど傷は深くないようなのでリーラはホッした。
ランディをテント内のベッドに座らせ、リーラが薬草で作った薬を傷口に塗っていく。その間、ランディはリーラを、じっと見つめている。
「何ですか…」見つめられて居心地が悪く、
ぶっきらぼうな言い方になる。
「君に手当をしてもらうのは嬉しい」
「傷を増やさないでくれる方が、僕は嬉しいですけど」
「君が俺を構ってくれるのが、嬉しいんだ」
薬を塗り終えたリーラを抱き上げ、ベッドに横にする。やっと二人きりの時間になったとお互い感じただろう、くすくすと笑いあい抱き合う。
「明日、川に水を放てば、水が不足していた西側の田畑も潤う。計画通りに進んでいて間違いはないだろう。だがな...これから先、また問題にぶつかった時、間違えないようにできるだろうか…」
「ランディでも不安を感じますか?」
「そうだな…恐らく周りは俺に何も言わないだろう。王としての決断を迫られることはある。そうなった時、判断を間違えないようにできるだろうか…ってな」
「ランディならできると思います。あなたが正しいと思い行動することに、多くの国民はついていきます」
「そうか…ありがとう。君もついてきてくれるか?」
「もちろん!」
いつものように抱きしめる手を緩めずに、リーラを抱え直す。ランディの体温を身体中で感じる。
「だけど、俺がもし間違っていると感じたら教えてくれないか。君が俺を正して欲しい」
「僕...がですか?」
「君の前ではいつも素直になれる。だからずっとそばにいてほしい」
胸がキュッとした。いつも堂々たるランディが言葉に詰まりながら話をする。そして、ほんの少し甘えているようにも感じる。
「わ、わかりました。僕でよければ」
「君の言うことは素直に聞けるんだ」
鼻をちょんと触られた後、キスをされた。今日は二人以外の誰もいない。深いキスもそれ以上もできる。でも外には護衛も大勢いるし、それに二人ともなんとなく戯れ合うだけで満足だった。
「リーラ…城に帰ったら湯浴みに連れて行くがいいか?」
二人で睦み合うと言われ、真っ赤になってしまったリーラだが、コクリと一度だけ首を縦にふる。
「はやく城に帰りたい…」ため息のようにランディが呟き、抱く手を強めるのでリーラは可笑しくなり笑ってしまった。
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