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第33話
「陛下おかえりなさいませ」
「おつかれでしょう。リーラ様、お腹空いていらっしゃいますか?」
王宮に戻ってきたのは夜遅くだった。
それでも、やはり予定より早く到着したようで、執事や侍女、使用人たちは大慌てである。
「今日は疲れているので、このまま寝室へ。何か食べ物を少し持ってきてもらえるか」と、ランディはリーラの手を引き歩きながら伝える。
「ネロとアルはもう寝てますよね」
「そうだな、遅くなったから寝てるだろうな。明日の朝に会うとするか。今日はこのまま寝よう。久しぶりにゆっくりとな」
部屋には果物と少しのワインが置かれていた。
「リーラ、ありがとう。それにしても疲れたな」
「ランディこそ、お疲れさまでした」
『こっち』と、ソファに座るランディに手招きされ、膝の上に抱え上げられる。
そのまま座るランディの上に横抱きにされ、葡萄を一粒口の中に入れられた。
甘くてみずみずしい。
双子が見たら「横になって食べちゃいけないんだ」って言われそうなだらけた姿になっている。ネロとアルにはいつもソファで横になって食べたりしないようにと注意しているのにと、自分自身の今の姿にリーラは苦笑いしていた。
「美味しい…」
「葡萄?桃?どっちがいいんだ」
果物を指差しながらリーラに尋ねる。
「桃がいい、美味しそう」
ランディの手から桃を食べさせてもらう。やわらかい桃からみずみずしい果汁が溢れ落ちてくる。上手く口に入らずリーラは口をすぼめて、しずくをすする。
甘い果汁が滴り落ちるから、ランディの指ごとぺろっと舐めて吸い上げた。
「リーラ…今のは君が悪いと思う」
「は?えっ?」
抱き上げゆったりと歩き出す。でも…
どこに行くかって、それは知ってる。
「人払いしてくる」
期待しないわけではない、期待通りというわけでもない、お互いの欲望に抑えが効かなくなっていくのがわかる。抱きしめても、抱きしめられても足りない。こんなに欲深くなってしまったのかとリーラは自分の気持ちに驚く。
熱いキスを繰り返す。湯浴みの中でため息が反響し、お互いを欲しがり、求め合うことでより興奮を覚える。
「んんっ…」
「リーラ…」
首筋にキツくキスをされる。痛いキスほど気持ちがいいと教え込まれる。
皮膚から快感を植えつけられ、声も肌も触れるもの全てに手を伸ばして、今だけ独り占めしたいとリーラは思っていた。
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