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第37話
ランディが双子を遊びに連れ出してくれた。
その間、ゆっくり寝ていていいと言われたが、身体が動き出したいと言っているようで、リーラはいつもの帽子を被り、薬草畑に出向いた。
薬草はぐんぐんと元気に育っていて、水を吸収する力も感じるほどだった。後でゆっくり薬を煮出ししようと考えなら、キッチン近くで働くみんなの所へ久しぶりに顔を出した
「リーラちゃん!元気だった?」
「おう!久しぶりだな」
「昼、食べていくか?」
久しぶりだが、相変わらずの活気を受け落ち着く。昼時になるので、久々にみんなと一緒に食事をすることにした。
「最近どうしてたの?見なかったわよね」
「うん、ちょっと遠出してたんだ」
話しながらも、キッチンの人達はせわしなく働いていた。
「何だか忙しそうですね、キッチン」
「そうなのよ。最近、離宮の手入れが始まってね、職人達がたくさん出入りしてるから、キッチンは大忙しみたい」
「離宮…ですか?」
「あそこに見えるでしょ?昔はあそこにランドルフ陛下のお母様がいらっしゃったの。でも今は遠くに宮殿を建てて、そこで暮らしてるのよ。余生を楽しんでいらっしゃるって聞いてるわ」
「そうそう、だからあそこの離宮は、手入れして誰か入るらしいの。やっと陛下はお妃様を迎えることになったのよ、きっと」
「そうなんですか…」
ランディの口からは直接聞いていないが、いよいよ妃を取ることが現実的になってきたとリーラは感じた。
「忘れられるかな…」独り言を呟くと
「何かあったの?リーラちゃん」
「嫌なことあったら食べて忘れちゃえ」
と、元気な声が飛んできた。今だけは、ここだけでは、笑っていられる。
中庭を除くと三人泥だらけになっている。後ろ姿でよく見えないが、三人共背中を丸めて何かしているようだ。その姿は微笑ましく、親子にも見えた。
「何してんの?」
リーラが声をかけると、慌てたように三人が振り返った。泥だらけだから怒られると思ったのだろう、ランディもネロ、アルも同じような顔でリーラを見る。
中庭に風を起こして、水を撒きその上に乗り、水を滑らして遊んでいたらしい。
最後は転げ落ちるから泥だらけになったのだろう。
「滑り台みたいなの作ったの?」
「う、ん…そう」
「ちょっと楽しくて…」
「いや、リーラ、俺がやろうって言い出した」
リーラはゲラゲラと笑い出す。それを三人はキョトンとした顔で見ている。
「そんな顔して…大丈夫、怒らないよ。でも、ちゃんと汚れを落としてから上がってきて、みんながびっくりするから。それと、すり傷つくってたら後であの苦い薬飲んでもらうね」
「えーっ」
「…はい」
「うっ…はい…」
「肌寒くなってきたから、風邪ひかないようにしてよ」リーラが声をかけると三人ともホッとした顔をした。
ちゃんと仲良くなれている。
自分がいなくても、ネロとアルはここでやっていけると確信した。
リーラは帽子を揺らしながら歩き出す。
少しづつ気持ちを整理できればいいなと背伸びをした。
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