37 / 52

第37話

ランディが双子を遊びに連れ出してくれた。 その間、ゆっくり寝ていていいと言われたが、身体が動き出したいと言っているようで、リーラはいつもの帽子を被り、薬草畑に出向いた。 薬草はぐんぐんと元気に育っていて、水を吸収する力も感じるほどだった。後でゆっくり薬を煮出ししようと考えなら、キッチン近くで働くみんなの所へ久しぶりに顔を出した 「リーラちゃん!元気だった?」 「おう!久しぶりだな」 「昼、食べていくか?」 久しぶりだが、相変わらずの活気を受け落ち着く。昼時になるので、久々にみんなと一緒に食事をすることにした。 「最近どうしてたの?見なかったわよね」 「うん、ちょっと遠出してたんだ」 話しながらも、キッチンの人達はせわしなく働いていた。 「何だか忙しそうですね、キッチン」 「そうなのよ。最近、離宮の手入れが始まってね、職人達がたくさん出入りしてるから、キッチンは大忙しみたい」 「離宮…ですか?」 「あそこに見えるでしょ?昔はあそこにランドルフ陛下のお母様がいらっしゃったの。でも今は遠くに宮殿を建てて、そこで暮らしてるのよ。余生を楽しんでいらっしゃるって聞いてるわ」 「そうそう、だからあそこの離宮は、手入れして誰か入るらしいの。やっと陛下はお妃様を迎えることになったのよ、きっと」 「そうなんですか…」 ランディの口からは直接聞いていないが、いよいよ妃を取ることが現実的になってきたとリーラは感じた。 「忘れられるかな…」独り言を呟くと 「何かあったの?リーラちゃん」 「嫌なことあったら食べて忘れちゃえ」 と、元気な声が飛んできた。今だけは、ここだけでは、笑っていられる。 中庭を除くと三人泥だらけになっている。後ろ姿でよく見えないが、三人共背中を丸めて何かしているようだ。その姿は微笑ましく、親子にも見えた。 「何してんの?」 リーラが声をかけると、慌てたように三人が振り返った。泥だらけだから怒られると思ったのだろう、ランディもネロ、アルも同じような顔でリーラを見る。 中庭に風を起こして、水を撒きその上に乗り、水を滑らして遊んでいたらしい。 最後は転げ落ちるから泥だらけになったのだろう。 「滑り台みたいなの作ったの?」 「う、ん…そう」 「ちょっと楽しくて…」 「いや、リーラ、俺がやろうって言い出した」 リーラはゲラゲラと笑い出す。それを三人はキョトンとした顔で見ている。 「そんな顔して…大丈夫、怒らないよ。でも、ちゃんと汚れを落としてから上がってきて、みんながびっくりするから。それと、すり傷つくってたら後であの苦い薬飲んでもらうね」 「えーっ」 「…はい」 「うっ…はい…」 「肌寒くなってきたから、風邪ひかないようにしてよ」リーラが声をかけると三人ともホッとした顔をした。 ちゃんと仲良くなれている。 自分がいなくても、ネロとアルはここでやっていけると確信した。 リーラは帽子を揺らしながら歩き出す。 少しづつ気持ちを整理できればいいなと背伸びをした。

ともだちにシェアしよう!