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第40話
王の前で跪いた騎士の報告を聞く。
「大雪が数日続いている場所の山から、
雪崩れが起きました。被害が大きくなっているようです」
「場所はどこだ」
「シエイ国との国境沿いの村です」
「わかった、すぐに対策を立てる。クリオス、レオン全員集めて準備を。状況を把握しろ、誘導できているか、人々が孤立しているところはあるのか教えてくれ。俺もすぐに準備をする」
あの日と同じだ。
リーラはシエイ国に住んでいた時に起こった土砂崩れを思い出した。
同じことが起きるかもしれないと感じ、
足がすくむ。
何も出来なかったあの時のことを思い出し、怖くてたまらなくなった。
(母さん、父さんがいなくなった時と同じ...
あの時と同じだ…)
「リーラ、すまん。話はまた後にしよう。俺はちょっと行ってくるから帰ってきたらその時に…」
「…」
俯いたまま動かないリーラの肩にランディは手をかける。
「リーラ…?」
「ランディ、僕もそこへ一緒に連れて行って下さい」
「雪崩が起きてるんだ。君たちはここで待っていてくれ」
「嫌…待てない。連れて行って、お願い。僕が大地に話しかける」
「…ダメだ、連れては行けない。君はここにいてくれ」
「なんで!お願い、ランディ行かせて。あの時の母さんと同じことを僕がしないと、また後悔する。それに、あなただけを行かせるなんてことできない...」
「リーラ...俺は帰ってくる。必ず帰ってくるから、約束する。俺を待っていてくれ、頼む…」
取り乱すリーラをランディはきつく抱きしめるが、全身で強く押しのけてくる。
リーラの気持ちも痛いほどわかるが、それでも連れていくことはできないと言う。ネロとアルは不安そうな顔でリーラとランディを交互に見ている。
「不安になって、自分を責めるのはもう嫌。黙ってじっとあなたをただ待つなんてできない。置いていかないで...ランディ」
ランディは深く長いため息をついた。
「俺のそばにずっとついていろよ。絶対離れないと約束できるか?」
「ランディ…支度してくる」
ありがとうと言い、リーラは政務室を駆け出して出ていく。
「お前たちはここにいて、リーラと俺を待っててくれよ。大丈夫だから、な」
不安で今にも泣き出しそうな顔をし、見つめてくるネロとアルにランディは笑顔で話しかけ、強く抱きしめる。
「リーラと一緒に帰ってくるから」
外に出たら雪は上がり空は晴れていた。
今から向かうと、予定では明日早朝に到着するだろう。
ライズに乗り、連なる山へと向かう。
もう足はすくまない、前に進む。
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