42 / 52

第42話

騎士団を中心に各部隊が避難している人々を誘導していた。小さな村であるが多くの人が避難しており、また、隣のシエイ国の人々も一緒に避難している。 食料も持ってきているが、人数も多いため、明日からまた派遣するように手配をするのに忙しくしている。 雪崩れは発生したが、被害は少なく皆ホッとしている。転倒し怪我をした人達の手当をリーラは始めていた。 その近くでランディは自国の部隊長へ指示を出し、隣のシエイ国兵士たちにも、これからのことを的確に伝えている。 「ママ…」 「どうしたの?はぐれちゃった?」 小さな女の子が涙ぐみながら歩いているのを、リーラが呼び止めた。 「ママ一緒にいた?」 「…うん」 これだけ人の出入りが激しいので、はぐれてしまったのだろう。女の子の母を探してくるとリーラはランディに声をかけた。 「僕、一緒に探してきますね。またここに戻ってきますから」 「リーラ、俺も行く」 「ランディはここにいて。シエイ国の人たちも不安そうだし、隊長や騎士団から報告もくるでしょ。すぐにこの子のママを探してきますから」 「しかし、俺から離れたら…」 女の子は泣き出しそうだった。 「ランディ!ちょっと行ってくる。大丈夫ですから!」 「おい!リーラ」 ランディが叫ぶも、一瞬の間に各部隊の隊長らに取り囲まれて、ランディは身動きが取れなくなっていた。 「一緒にママをさがそうね」 女の子を抱き上げてリーラは歩き出す。 「ママ…」 「お母さーん。いませんかー?」 雪が止み外にも人がたくさん出ている。 自宅へ帰る人達も目にする。 恐らくこの子の母も探しているだろう。外に探しに行ってるのだろうか。 ぐるぐると広い場所を回っていたところで、娘を探す母の声が聞こえた。 「ミーシャ!」 「ママー!」 女の子はリーラの腕から飛び降り、母のところへ走り出す。探していたのよと母の声が聞こえた。 「ありがとうございました」 「よかったね、ママと会えて」 女の子の母から感謝の言葉をもらい、リーラはランディの元へ戻ろうとした時、 後ろから「おい」とリーラに声がかかった。 「お前…お前なのか、こんなことをしたのは」 振り返って見ると、見知らぬ男たち数人がリーラを睨んでいる。 「だ、誰ですか…」 「俺は、お前を知っている。変な力を持ってるよな。災いをきたす者と呼ばれていただろう。それは本当だったんだ」 昔の記憶が甦ってくる。リーラを知っているというこの男は、シエイ国で暮らしていた時に追いかけられた国の役人であろう。 「俺、さっきこいつが地面に手をあてて何かやってたのを見た」 「この雪崩れもこいつが起こしたんだ」 男に距離を詰められ取り囲まれる。 「ち、違う、そんなことしない」 リーラが反論しても聞く耳を持たない。 「こいつを捕獲するんだ」 そう男が言うと同時に首筋をトンと叩かれ、リーラは意識を失ってしまった。

ともだちにシェアしよう!