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第46話

カタカタと小さな振動を体に受け、リーラは目を覚ました。また馬車の中だなと思いながらも起き上がらず、ぼけっとしていたら上から声がかかった。 「リーラ…起きたか?」 「あれっ?ここ…」 そうか、さっきのは夢ではなかったのかとリーラの意識はハッキリとする。 ここは連れ去られた馬車の中ではない。 そうだ、騎士団が用意していた馬車だとわかる。見上げると、心配そうな顔をしている男と目が合う。 「リーラ…すまなかった。俺がそばにいなかったから」 優しく抱きしめるがランディの身体が硬っているのがわかる。 「大丈夫か…?リーラ、俺は生きた心地がしなかった。ここまで一心不乱になったのも初めてだ。君がいないと思うと心が張り裂けそうだった」 「大丈夫です。びっくりして気を失ったみたいなので、何でもないですよ」 リーラは起き上がり笑顔でランディの顔を見つめる。 「よかった… ごめんな…」 そう言って抱きしめられる。もうこの腕の中には帰れないと思っていたのに、また抱きしめられ安心している自分がいた 「僕…連れ去られて、ああ、参ったなと思ったんですけど。このまま何処かに連れて行かされてもいいかなって思ったんです。ネロとアルに会えなくなるのはつらいけど、僕…ひとりで大丈夫ですよ。あなたが教えてくれた通りに生きていけると思うんです」 そう言いながら泣きそうになるのをリーラは必死で堪えた。最後にちゃんと伝えようと思う。あなたが教えてくれたってことを、ありがとうございますと伝えて、ひとりで生きていきますって言おうとしていた。 「ちょっと待て。君がひとりで生きていくなら俺はどうなる。俺は君がいないと生きていけないとわかった。ああ、そうだな、順番を間違えたか…だから先に伝えたかったんだ…」 最後は自分自身に苛立つように言うランディがリーラの目をまっすぐ見て続けた 「リーラ、俺の妃になってくれ」 「えっ…?」 「もっと別の場所で伝えたかったが、このままだと君がどんどん勘違いしていく…リーラ、俺はずっと君を愛している。伝わっていただろ?だけどな、君が悩んでいることも知っていた。自国から逃げてきて、我が国にいても肩身が狭い思いをしていたはずだ。だから俺は、シエイ国に出向き全ての手配をしてきた。もう君は我が国の国民だ。それと…シエイ国の国王に君を妃に迎えたいと伝え、許しをもらっている。全てが整ってから気持ちを伝えようとしていたんだ。そうじゃないと、俺が愛の告白をしても、また君は悩んでいたはずだ」 さっき、『俺の妃』と確かにランディは言っていた。言葉が蘇り頭の中で響く。 「えっ…そんなこと…いや、でも僕、男だし。それに、後継ぎを産むことは出来ないし…」 「後継ぎというのであれば、ネロとアルがいる。リーラ…俺は妾を持ったり側室を作ることはしない。他の国のように一夫多妻でもない。君だけを愛し、君だけを妃として迎える。確かに、世継ぎが必要だという声もある。だが、子供をたくさんつくればいいということではない。それはそれで争いや問題が出てくることもあるだろう。俺の後には、双子の王を誕生させてもいい、ネロとアルが嫌がれば、その他の優秀な者が上に立てればいい。全て可能性がある、そんな国があってもいいと思っている。恵まれていることに、この国には子供がたくさんいる。俺は、俺のやり方でこの国を改定したいと思っている。それには君が必要だ。俺が間違ったら正してくれるのは君だけだろ?君の言うことしか素直に俺は聞けないんだ。 わかるだろ?愛してるリーラ」 夢ではなかった。好きな人がまっすぐに思いを伝えている。反論できないほど周りを固められていた。リーラがひとりで生きていく理由はどこにも見当たらない 「君のことが必要で、俺には君以外は目に入らないんだ。リーラ、俺の妃になってくれるか?」 「ランディ…僕、言っていいの?ランディを好きだって言ってもいいの?」 リーラ…とランディが強く抱きしめる。この腕の中が大好きだとリーラは実感する。好きだと、あなたを愛してると声に出して伝えていい日が来るなんて、まだもしかしたら夢かもと思ってしまう。でも、目の前にいる人が強く抱きしめて離してくれないから、この人について行こうとリーラは心に決める。 「キスしていいか?」 「いつもしてるのに…」 「これからの約束として、キスさせてくれ。君と共に生きていく、生涯離れない。愛している。我が王妃」 ゆっくりと唇が重なる。 何度も何度も繰り返しキスをする。 「君の唇は柔らかい」 「フフッ、あなたも」 いつかの会話も繰り返す。

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