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第47話
「よし!帰ったら婚礼の儀をあげる準備をする。すぐだ、直ちにやらなくては!」
お互いの気持ちを伝え合い、ランディの妃になるのを承諾してから、ずっと馬車の中ではこの調子であった。
「ランディ結婚式ってこと?それ、やらなくちゃダメ?僕、男だし恥ずかしい」
「ダメだ。これはいくら君が恥ずかしいとか言っても国民や隣国に知らせるためにはやらなくてはならない。絶対!」
国王陛下なので仕方ないとは思うが、そんなに急がなくてもと思ってしまう。恥ずかしい気持ちはあるが、それでもやっぱりリーラも嬉しかった。
「それと…あんまり聞きたくないが、連れ去られた時のこと教えてくれ」
「あー…ですよね…」
あまり聞きたくないと言うので、掻い摘んで伝えても、詳しく知りたいと言う。
「んーっですから、後ろからトンってされたら気を失ったんですけど…あっ、その人が言ってました、頭が痛くなければ大丈夫だって。なんか凄いですよね、そんな技があるみたいです。本当、軽くトンって感じでしたよ」
トンって、とわざと明るくジェスチャーを交えて伝えても、ランディはまたギリギリと歯ぎしりをし、殺気を大量に放出していた。
「許せん…やっぱり極刑…」
ほらね、とリーラは心でため息をつく。
(詳しく聞きたいとか言うから…)
「ランディ…ダメです。あの人達、本当はそんなに悪い人ではない気がします。僕の力が災いをもたらすって思ってるみたいで、昔から言われてたように捕獲しないとって思ったみたい。それに、車輪が溝にはまった時に僕が手伝おうとしたら、細っこいからそこにいろって言ってくれたし、荷台から荷物を運び出したりする指示を僕が出したら素直に聞いてやってくれました。怒鳴ってる人もいたけど…そんなに怒っても仕方ないでしょって言って、夜になる前にやりましょうって叱ったらみんな動いてくれましたよ」
口をあんぐりと開けてランディがリーラの話を聞いている。どうしたんだろうと思い、首を傾げ見ていると、大きな声で笑い出す。
「君は…本当に…俺の妃は頼もしい。
連れ去られたのに叱ってやったのか」
「いや、叱ったっていうか…ネロとアルにいつも言ってる感じで…つい…」
「君には勝てないな、ずっとそう思っていたけど。俺は生きた心地がしなかったが、それを聞いて少しだけ安心した」
またキツく抱きしめられる。
こんなに近くにいるからもう大丈夫なのに、思い出すとやっぱり怖さもあった。
「ランディが教えてくれたんです。何が起きても恐れずに前に進むって。だから、あなたに恥じないよう生きていこうって思って行動しました」
顔を上げたらキスをされた。
おでこにも頬にも唇にも。
悩んでいないのに、おでこにもキスするんだなとランディを見つめる。
「俺は君を愛している。君の全てが愛おしい。やっぱり君の言葉が俺を正してくれたんだ。あのままだったら、俺はシエイ国の民に酷い仕打ちをしていただろう。それを君が止めてくれた。ほらな、俺は君の言葉は素直に聞けるんだ」
「ありがとう」と言うランディの胸に埋もれた。トクトクと温かく響く音が心地いい。やっぱりここが安心するとリーラは大きく息を吸い込んだ。
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