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第50話
身体のあちこちが痛く、まだ何か後ろに埋まっている感じはするが、とにかくネロとアルに会いに行かねばと、リーラが強く主張する。
自分の足で立ち、歩いて行くと言うのに、
抱き上げようとしてくる男に苦言を呈する。
「だから…大丈夫ですって、歩けます。抱き上げられながら会ったら、みんなびっくりするでしょう」
「いや、ダメだ。俺の責任だからな」
リーラから目を離した隙に連れ去られたことが、ランディはかなりショックだったようだ。片時も離せないという。
「じゃあ、ここを出るまで、ね。あっちに行ったら絶対自分で歩きますから」
「うーん…約束はできない…」
中々離宮から出ることが出来ないので、リーラがかなり譲歩する形をとる。
それでも何とか皆がいる所まで行き、
やっと双子の顔を見ることができた。
「リーラ!」「やっと会えた!」
双子が泣きそうな顔でリーラ目がけて駆け寄ってくる。両手を広げてあげると少し大きくなった二人が突進してきた。リーラの後ろにはランディがいる。全員まとめて支えようとしていた。
離宮にいる間にあらゆる物事を解決してくれていたようだ。優秀な大臣をはじめ、宰相、侍従に侍女達、そして勇敢な騎士団のおかげである。そのみんなも出迎えていてくれた。
雪崩れはもう既に収まったが、後片付けと物資や援助を続けているという。あの山と大地にリーラは約束をしたので、必ずもう一度出向き、豊かな場所になるよう働きかけたいと伝えた。
ランディも、国王陛下として十分な措置をとると約束している。豊かな大地に広がり、人々と共に生まれ変われるのを想像し、リーラは嬉しくなる。
リーラが最も気になっていたのは、シエイ国の人だった。リーラを連れ去った男たちはその後、シエイ国で相当の罰を与えられたと報告があったと宰相が言う。首を刎ねられなくて良かったとリーラはホッとする。報告を聞く間中ランディはリーラの肩を抱きしめて離さなかった。
「ねぇ、ランディそれで?」
「いつ?決まったの?」
ネロとアルがランディに纏わり付き聞いている。こんな光景は村でよく見てたなとリーラは懐かしくなった。が、決まったとはなんだろうと、会話の内容にリーラは耳を傾けた。
「おう!喜べ、やっと俺の妃になるぞ」
「「やったね!」」
ネロとアルは知っているのだろうか。
いや、リーラが妃になるということは、まだ誰にも伝えていないと思う。正確に二人には伝えないといけないと慌てる。
「えっ、ちょっと待って、順番に話しないと、えーっとよく聞いてネロ、アル、
あのね…」
リーラが口を開き双子に話しかけようとした時、そばにいた皆が口々に安堵の息を吐きながら言い始めた。
「よかった!おめでとうございます」
「もうほんっとに、ヤキモキしてましたわ。本当におめでとうございます」
「随分ゆっくりしてたな。おめでとう」
「どうなることかと思ってました。安心しました。忙しくなりますね」
「ランディの態度が分かりやすいから、こうなるとわかってたけど、皆ドキドキしてたからね。リーラちゃんだけだよ。知らないのは」
最後は宰相のクリオスからリーラは面と向かい言われ驚く。ランディとリーラの行動を皆が温かく見守ってくれていたらしい。自分の気持ちが知られていたのかと思うと恥ずかしいが、嬉しくも思う。
ここには多くの人がいて、とても温かく頼もしい。自分もその一員になれるのは誇らしく思った。
「リーラ、よかったね。嬉しい?」
「僕も嬉しいよ。ランディで」
本当に嬉しそうにアルとネロがリーラに伝える。恐らく二人にはランディが何かしらのことを言っていたのだろう。思い当たる節はあるかなと、考える。
「ありがとう。ネロ、アル」
リーラは二人を抱きしめた。
「婚礼の儀を執り行う。なるべく早く準備をして欲しい。近隣の国にも伝え、国民にも、もちろん伝えるつもりだ」
晴れ晴れとした顔でランディは皆に伝えた。
この人についていくことを決めて良かった。自分の持つ力と、この人を思う気持ちを目一杯使い、一緒に生きていこうと心に誓う。
ランディを愛してる。
この勇ましく、聡明で賢明な王を近くで支えていけるのが、リーラの生きる糧になると感じている。
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