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第29話

その日は、身体を綺麗に拭いてから、何故かダブルベッドの部屋で俺もシルヴァも疲れて爆睡してしまう。 部屋に通された時、疲れ切っていたからダブルベッドにツッコミを入れる気力も無くシルヴァとベッドに入った瞬間に落ちた。 寝落ちする間際、俺の指輪が青白く光っていて綺麗だなぁ~なんて思いながら意識を手放した。 夢の中で俺は、水鳥の羽実験が成功して、器を外すと中の水鳥の羽が濡れていて、そこを掘り起こすと水が吹き出して来る夢を見ていた。 シルヴァと抱き合って 「やった!水が溢れ出して来た~」 と喜んでいる居ると、遠くに雨が降る音が聞こえる。 (ん?雨?……雨が降ったら実験出来ない!) っと、思わず飛び起きた。 そして窓を開けると……外は土砂降りの雨。 「雨……」 呆然と呟いた俺の言葉に、今度はシルヴァが飛び起きた。 「雨だって?」 そう叫ぶと、窓の外を見てから裸足のまま外に飛び出して行った。 「シルヴァ!靴と上着!」 叫んだ俺の声は届いていないらしく、シルヴァが外に飛び出して 「雨だ!本当に雨が降っている!」 ずぶ濡れになりながら、シルヴァが両手を空に向けて広げると、握りこぶしを作ってガッツポーズをしていた。 村の子供達は家から飛び出してはしゃいで雨の中を走り回り、大人達は天に祈りを捧げていた。 その光景を目にした時、俺は自分の小ささを恥じた。 実験なんて、どうでも良いんだ。 村の人が雨の恵みを喜んでくれるなら、それ以上の幸せなんて何処にも無い。 そう思った瞬間だった。 川の方から物凄い音が聞こえて慌てて見に行くと、塀が開けられて水が勢い良くこちら側の川に流れて来ている。 恐らくこの土砂降りで水かさが増してしまい、塀の向こう側の川が氾濫してしまうからだろう。 全て自分達だけの事しか考えていない行為に腹を立てていると 「良かった……。これで、ダムに水が蓄えられる」 シルヴァはそう呟いて、胸元で手を合わせると 「神よ、御加護をありがとうございます」 と祈りを捧げていた。 「ダム?ダムを作ったのか?」 驚く俺に 「あぁ、前に夢の中で多朗にアドバイスを受けたからね」 って、不思議な事を言い出した。 「夢の中?」 そう呟いてシルヴァを見たら、雨でシルクの白いパジャマが濡れて肌が透けている。 「シ……シルヴァ、肌が透けてる!これ着て!」 慌てて手にしていたシルヴァのガウンを肩に掛けた。 水も滴る良い男って、こういう事を言うんだろう。 雨に濡れて水滴が落ちている金色の長い髪も、雨に濡れた整った顔も美しい。 そして何より、白いシルクから透けている肌とピンクの乳首が艶かしい。 (ヤッベ!勃ちそう!) と、慌てて視線を逸らす。 するとシルヴァは濡れた前髪をかき上げながら 「多朗?どうしたの?」 って、わざわざ視界に入って来る。 (待て待て!今はダメだ。俺の多朗ちゃんが、元気に目覚めてしまう!!) そう思っていると 「シルヴァ王子、多朗殿!雨水でお風呂を沸かしました!」 と、村の人達が声を掛けてくれた。 俺はホッと肩を撫で下ろし、子供達に囲まれてシルヴァと村の公衆浴場にお邪魔した。 子供さえいれば、俺の多朗ちゃんも大人しくしているだろう。 そう思って、雨で冷えた身体を子供達と混じって温めた。

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