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第51話

城に戻ると、和久井が真っ青な顔をして走り寄って俺をそのまま自分の部屋へと連れ込んだ。 「神代!大変な事になってるぞ」 慌てる和久井に 「何?何があったんだよ」 と呑気に尋ねた俺に 「シルヴァ王子が、貴族を敵に回したと騒ぎになっているんだ。ほら、何ヶ月か前に雨が降っただろう?」 そう言われて 「あぁ、俺の雨男が発揮した日な」 と軽く答えると 「え!あれ、神代が原因だったの?」 って、和久井が目を丸くして叫んだ。 「城では、シルヴァ王子が貴族を潰す為に雨を降らせたって騒がれているんだよ」 「はぁ?なんで雨を降らせたくらいで騒ぐんだよ」 「ここの貴族達は、平民から多額の水代をせしめてたらくてさ。それをシルヴァ王子が咎めていたらしいんだ。で、貴族達からシルヴァ王子が反感買ってたんだよ」 和久井の言葉に 「なんだよそれ!水は全ての人に平等に与えられるものであって、貴族や王族のモノじゃないんだぞ!」 と、思わず怒りで叫んだ口を手で抑えられ 「俺だってそう思うよ。でも、この国を動かしているのは貴族達なんだよ。そんな貴族達を怒らせたら、いくらシルヴァ王子だって大変な事になる」 小声でそう言うと、和久井は俺の手を掴んで部屋の中にあった隠しドアから何処かへと移動し始めた。 「とにかく、お前が雨を降らせたなんてバレたら大変だ。シルヴァ王子と一緒に殺されてしまう」 和久井の言葉に、俺はびくりと身体を震わせた。 「おい、和久井。シルヴァは?これから行く場所に、シルヴァは居るんだろうな?」 と尋ねると 「来れば分かるから」 そう言われて、俺は黙って和久井に着いて歩いた。 しばらく歩くと、水路から森の奥の小さな城に辿り着く。 「奏叶!」 小さな城には、心配そうな顔をしたエリザ姫が和久井の姿を見つけて抱き着いた。 (おぉ!お前らもいつの間に!) そう思っていると、シルヴァの姿が見えない。 「なぁ、シルヴァは?」 と不安になってエリザ姫に聞くと 「お兄様は今、王室裁判にかけられています。大丈夫です。必ず此処に参りますから」 そう言われて、俺は不安で震える手を両手で握り締めて祈り続けた。 (俺達は何も悪い事なんてしていない) 何度も自分に言い聞かせて、段々と暗くなる空を見上げていた。 三人で居ても仕方ないので、俺は一人、自分用に与えられた部屋で窓の外を眺めていた。 夕日が城の前にある湖に綺麗な夕日を映し出す頃 「多朗……」 と俺を呼ぶシルヴァの声が聞こえた。 「シルヴァ!無事だったのか?」 走り寄って抱き着くと、シルヴァは悲しそうな顔をして 「多朗、君はこの世界から追放になった」 そう告げた。 「え……?」 「シルヴァは?お前も一緒だよな?」 シルヴァの腕を掴むと、シルヴァは優しく微笑んで 「エリザも一緒にこの世界を離れる。だから、心配しないで」 そう言って俺の頬を優しく包んだ。 「明日の朝、日の出と共に元の世界に戻る」 シルヴァの言葉に、俺はシルヴァの腕を強く掴んで 「俺、お前が一緒じゃなくっちゃ帰らないからな」 そう伝えた。

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