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第52話 元の世界への帰還

「多朗……」 シルヴァは泣きそうな笑顔を浮かべると 「向こうの世界に行っても、多朗は僕の伴侶で居てくれるのか?」 って呟いた。 「当たり前だろう!あれ?でも、シルヴァって年齢は幾つなんだ?」 「多朗より五つ年上だよ」 「そっか。じゃあ、まずはシルヴァの仕事先を探さないとな。それまでは、狭いけど俺の部屋で一緒に暮らそう。両親には……上手く説明する」 そう言ってシルヴァを見上げ 「だから、シルヴァも一緒に行こう」 と言って真っ直ぐシルヴァを見つめた。 「僕は王族の仕事しかした事が無いから、たくさん迷惑を掛けるかもしれないよ」 「そんなの、お互い様だよ」 そう笑顔で答えた俺を、シルヴァが強く抱き締めた。 ゆっくりと見つめ合い、俺達は自然と唇を重ねた。 ベッドに重なり、夕日が夜の帳に変わるのを感じながら俺達は身体を重ねた。 この日のシルヴァは、まるで宝物を扱うかのように丁寧に俺の身体に唇を這わせる。 焦ったさでどんなに先を求めても、まるで俺の身体を記憶に刻み込むようにシルヴァの唇が俺の肌を這う。 「多朗、愛しているよ」 何度も囁かれる言葉に、胸の中に不安が渦巻く。 「シルヴァ、お前まさか……」 そう言葉を発した時、俺の中にシルヴァ自身が穿たれた。 「アァ!」 仰け反った俺の胸にシルヴァの唇が吸い付く。 「ヤダ……シルヴァ……お前、何か隠してる……」 必死に紡ごうとする言葉は喘ぎ声に変わり、シルヴァが与える快楽に何も考えられなくなっていた。 「あ……っ、あっ……」 両足を抱えられ、足首にキスを落とすと深く腰を打ち付けられた。 唇を重ねながら、シルヴァのサファイアの瞳から涙が流れているのに気付いた。 俺はハッと我に返り、何となく俺達が果てた時が最後なんじゃ無いだろうかと思った。 でも、激しく腰を打ち付けられて段々と身体が追い上げられているのがわかる。 「いや……だ、シルヴァ……ぁ、イキたく……無い」 振り絞った声に、シルヴァが悲しそうに微笑む。 「多朗。きみは全てを忘れて、向こうの世界で幸せになって」 そう言って頬にキスを落とした。 「イヤ……だ!シルヴァ、こんなの……イヤだぁ!!!」 悲鳴と共に、激しく揺すられて俺の中でシルヴァの熱が弾けたのを感じた。 俺もその熱を感じながら、ゆっくりと意識が遠退いていくのが分かった。 シルヴァ……愛してるんだ。 お前の居ない世界なんて、考えられないのに。 視察の旅を回りながら、シルヴァの本質にたくさん触れた。 キラキラな王子様なのに、嫉妬深いし独占欲が強い。 だけど、平気で国の為に泥だらけになって井戸を作っちゃう奴なんだって俺は知ってる。 なぁ、シルヴァ。 お前は、こうなることを初めから知っていたのか? だとしたら、なんで俺達は出会ったんだよ。 こんな別れ方をするなら、俺は……俺は……。 光が俺を包み、俺の意識は此処で途絶えた。

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