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第70話

フカフカのベッドも、高級な調度品も無いシンプルな部屋の真ん中に鎮座した布団の上で、シルヴァが長い髪の毛を結んでいた。 炬の炎に照らされて、シルヴァの金色の髪の毛がキラキラと輝いている。 その光景をぼんやり眺めていると、シルヴァが俺の視線に気付いて手を差し出した。 おずおずとその手に右手を乗せると、いとも簡単に抱き寄せられてしまう。 「うわぁ!」 と言いながら、すっぽりとシルヴァの腕の中に入ると、シルヴァは強く俺を抱き締めて首筋に鼻を寄せてクンクンと匂いを嗅いでいる。 「多朗の匂いだ……」 そう言いながら、まだ寝ている多朗ちゃんと重なっていたシルヴァ君がムクムクと元気になって行く。 腰を抱き寄せられ、シルヴァを見上げるとゆっくりと顔が近付いて来て唇を重ねる。 舌を絡め、口内を傍若無人にシルヴァの舌が暴れ回る。 「んっ……んぅ……」 俺もシルヴァに応えるように舌を絡めると、ザラザラとした感触に甘い疼きが腰を駆け抜けて声が上がる。 角度を変え、吐息までも奪うように唇を奪われて腰が砕けてしまう。 そのまま布団に押し倒されて、手を繋いだ状態で唇を重ねる。 舌を絡め、シルヴァの唇が俺の舌を唇で挟んで吸い上げながら扱くように顔を動かされて腰が浮くと、再び舌を絡めながら腰を抱き寄せられた。 互いの熱が重なり、シルヴァが擦り合わせるように腰を振る。ゴリゴリとした感触が擦れ合い、仰け反った喉元にシルヴァの唇が吸い付く。 首筋に舌を這わされ白い浴衣の帯を解くと、シルヴァの綺麗な指が浴衣の合わせから差し込まれて俺の胸に触れる。 「あっ……」 ピクリと身体が震えると、キスをしながらシルヴァの手が白い浴衣の併せを開いた。 シルヴァも自分の白い浴衣の帯を解き、着ていた浴衣を床に落とした。 炎の明かりの中でも、シルヴァの全ては美しい。 こんなに全部整った王子様が、自分の伴侶だなんてまだ信じられない。 ゆっくりと俺の身体に重なるシルヴァを、俺はそっと抱き締めた。 揺れる炎が作る薄明かりの中、俺はシルヴァの腕の肌を撫でるようにしながら首に手を回そうとして、逞しいシルヴァの右腕に見た事の無い焼きゴテで着けられた跡を見付けた。 それは紋章の様な跡で、嫌な感じがした。 触れると火傷の跡のようにザラザラしていて、思わず 「シルヴァ……これ……」 そう呟いてしまったのだ。 するとシルヴァのサファイアの瞳が動揺して揺れ動き、突然狂ったようにその跡を爪で引っ掻くと 「見るな……多朗、見るなぁ!」 そう叫んだのだ。 シルヴァの声に呼応するように、炬の炎が激しく火事になりそうな勢いで燃えさかる。 「シルヴァ……落ち着いて!」 慌ててシルヴァを抱き締めると、シルヴァが頭を抱えて身体を震わせ 「俺はもう……、多朗に触れちゃダメなんだ……」 そう呟くと、サファイアの瞳が暗い色に変わって行く。 「穢れた俺は……もう、多朗に触れる資格なんか無い……」 ブツブツと呟くシルヴァの瞳から、涙が幾つも流れて意識が深い闇の向こうに堕ちて行くのが見えた。 「シルヴァ!」 俺が慌てて名前を呼んでも、シルヴァの瞳から生気が消え去ってしまった。 (このままでは、シルヴァは自死してしまう!) 慌てて、シルヴァが掻きむしる場所から手を離し、血だらけになっているシルヴァの腕に手を翳した。 手から青い光が放たれ、肉を剥ぐように引っ掻かれた場所に着けられた傷がゆっくりと塞いで綺麗になって行く。 俺は肌に焼き付けられた跡に嫌な感じがして、その場所に舌を這わせてみた。 すると突然、目の前にシルヴァが捕らえられた光景が脳裏に浮かんで見えたのだ。

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