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第71話 知られざるシルヴァの半年間
そこはあの、魔石だらけの部屋の中だった。
魔石で力を封じられ、両手を後ろに拘束されながらシルヴァを見下ろすあの男が見える。
あの日、西の果ての村で会ったルーファス公爵の姿だ。
何人もの男達に魔石で作られた部屋の地べたに身体を押さえつけられて
『シルヴァ王子……これで貴方は、私の奴隷だ』
熱く熱した焼きゴテをシルヴァの目の前に見せると、ゆっくりとシルヴァの右腕に押し当てられた。『ジュウ』っと肌が焼ける音と同時に、肉の焦げた匂いとシルヴァの声にならない悲鳴が上がる。ぐったりと項垂れたシルヴァの前髪を掴み、ルーファスが楽しそうに笑いながら
『右腕の印は、性奴隷の証。王家の気高き王子が、私の性奴隷になるなんて!この日をどれほど待ち侘びたか!』
身震いさせて喜ぶルーファスに、シルヴァはキッと睨み上げて
「ふざけるな!誰が貴様の性奴などなるものか!」
そう叫んだ。
しかしルーファスはシルヴァの顎を掴むと
「貴方はこの部屋にいる限り、力は使えない。使えば使うだけ、その力は私のモノになる」
そう言って笑うそいつの指にはめられた黒い石に、ユラリと青い炎が浮かぶ。
「魔石を王家から盗んだのは、お前だったのか!」
「シルヴァ王子……いや、今はもう私の奴隷のただのシルヴァ。王家の人間はみな、この魔石に力を吸わせて殺してしまいました。簡単でしたよ。この石はなんと素晴らしい石なんでしょうね」
嬉しそうに笑うルーファスを、シルヴァが愕然とした顔で見上げた。
「父上と叔父上を……殺した?」
「えぇ……貴方以外は、王家の人間は国民の前で皆殺しです。あの、国民が絶望に打ちひしがられた姿は堪らなかったですよ」
楽しそうに笑うルーファスを睨み上げると
「あぁ……シルヴァ。反抗的なその瞳さえも美しい」
うっとりと呟くと、シルヴァの頬をベロリと舐め上げてから
「しかし、何故かあなたにそっくりなエリザ姫が何処を探しても見つからないんですよ。折角、私の妻にと思っていたのに……」
残念そうに呟いた。
それからニタリと気色悪い笑顔を浮かべると
「でも、私が本当に欲しいのは貴方だ。シルヴァ。あぁ、夢のようですよ。貴方のこの美しい身体が、これからは私のモノなんて」
顎を捕まれ、身動き出来なくされている状態で、シルヴァは顔を舐め回わされて不快な表情を浮かべた。
「さぁ……その美しい身体を、堪能させてもらいましょうか?」
幾つもの手が伸びて、暴れ回るシルヴァの衣類を剥いで行く。
「止めろ!汚い手で触れるな、無礼者!」
力を発動したその時、シルヴァの身体がガクンと落ちた。
「な……んだ?」
「この指輪はね、私の意思で貴方の魔力を吸い取れるんですよ。今、貴方は意識しか思い通りにならない」
楽しそうに笑い、シルヴァの綺麗な肌に手を這わす。
「あぁ……思った通りに美しい。あなたのまがい物など足元にも及ばぬ美しさだ」
部屋のベッドに運ばれたシルヴァは
「殺せ!こんな辱めを受けるくらいなら……ひと思いに殺せ!」
唯一自由になる口で叫ぶと
「あぁ、そうだ。自害など考えないで下さいね。貴方が私に歯向かう度に、国民を1人ずつ殺しますよ。自害した場合、貴方の身の回りの世話していた物をこの部屋で皆殺しにします」
そう言われて、シルヴァの目が大きく見開かれた。
「大丈夫ですよ。貴方が大人しく私に抱かれていれば、国民もこの城の使用人達も……みんな平和だ」
首筋を這うルーファスの舌を、シルヴァは大人しく受け止めた。
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