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第78話

すると光が俺達を包み込み、元の場所で俺達は抱き合っていた。 シルヴァが混乱した顔で俺を見ると 「多朗……今のは一体?」 と呟く。 「え?お前の意識の中に入ったんだよ。シルヴァが前に出来たから、俺にも出来るかな~ってやってみたら出来た」 そう言いながら、そっと噛み跡の着いた場所に手を翳して傷の手当てをする。 するとシルヴァは、手に有った筈の刻印が無くなっているのに驚いて 「多朗!此処の印は?」 と叫んだ。 「え?食った」 「え?……食べた?」 俺とシルヴァが顔を見合わせる。 「多分、お前に着けた印は魔石で作られたモノだったんだろうな。本来なら、お前だって自分の身体の傷位なら治せる筈だ。それがあんな風に残るなんて、普通じゃない。それと、多分呪い?呪縛?みたいなもんだろうな。お前が誰かを抱こうとすれば、お前が闇堕ちするようにでも呪いがかけられていたんだろうよ」 俺はそう言うと、シルヴァを真っ直ぐに見つめ 「シルヴァ、もし俺とお前が逆の立場だったとしたら、お前は俺を嫌いになるのか?」 と聞くと、シルヴァは首を横に振って涙を浮かべた。 「お前が受けた屈辱も、辱めも消えないかもしれない。でも、俺はお前のその全て丸ごと受け止めてお前と生きるって決めたんだ。だからお前も、腹を括れ!それにお前、二人の子供の親父になるんだぞ!」 そう言って、シルヴァの頬を軽くペチペチと叩く。 「多朗……僕は多朗と一緒に歩いて良いのか?多朗を不幸にしたりはしないか?」 綺麗な涙を拭うこと無く、シルヴァが真っ直ぐに俺を見つめて呟いた。 「当たり前だろう?だから俺は此処に戻って来たんだろうが。なぁ、シルヴァ。男が男の子供を産むって覚悟は、生半可な気持ちじゃねぇんだよ。俺はな、この世界を救いたいとか、そんなご大層な気持ちで妊娠したんじゃ無い。俺がこいつを身籠ったのも、もう一人この身体に身篭ろうと思ったのも……お前の子供だからだよ」 そう言って微笑んだ。 「多朗……」 「お前の居ない世界を生きるくらいなら、俺は例え修羅の世界でもお前の手を取って歩いてやるよ」 「僕は……その手を取っても良いのか?」 「バカヤロウ!取っても良いだ?取って貰わないと、困るんだよ!まぁ、お前が嫌だと言っても、強引にその手を取るけどな。そして、今度は絶対に離さなねぇよ!」 シルヴァの頬に触れていた手に、シルヴァの手が重なる。 「多朗……僕を、きみの隣に……。そしてきみの子供たちの父親にして欲しい」 そう呟くシルヴァの空いている手を腹に当てて 「ば~か!して欲しいじゃらねぇんだよ!こいつらの父親は、お前だけだっつ~の!」 と答えると、シルヴァがやっと綺麗な笑顔を浮かべた。 「その分、お前にも辛い思いさせると思うけどな」 ふとシルヴァが心配になって呟くと、シルヴァは泣き笑いしながら 「多朗が居てくれるなら、僕はどんな場所でも生きていられる」 そう言って俺の身体を強く抱き締めた。 「シルヴァ、今度こそ……お帰り」 シルヴァの身体を抱き締め返し呟くと、シルヴァは涙でぐしゃぐしゃの顔で笑い 「ただいま、多朗」 と呟いた。 俺はシルヴァを見上げ 「シルヴァ、忘れるな!お前の帰る場所は、俺の腕の中だ」 そう言い切った俺に、シルヴァは何度も何度も頷いて俺の身体を強く抱き締めた。 俺は運命だとかそんなモノは信じて来なかった。 自分の人生は、自分で切り開くものだと今でも思っている。 だけど、今こうして抱き合っている相手がシルヴァなのは、悔しいけど『運命』ってヤツなのかもしれないと、そう感じていた。

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