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第93話
うちの双子は、どうやらサシャの娘のアイシャが大好きらしい。
サシャとリラの間に出来た娘のアイシャは、両親が溺愛するくらいに可愛い。
それはもう、お人形さんのように本当に可愛いんだ。
ただ、エメラルドの瞳をしているので、残念ながらデーヴィドの番らしい。
この世界に来てわかった事が幾つかある。
王家の伴侶となる相手は、その相手の瞳の色で生まれる。シルヴァのように、相手が異世界の人間の場合のみ、相手の属する瞳の色になるんだとか。
シルヴァに容姿も性格も似ているデーヴィドなら、ちゃんと相手が出来るだろうか……なんて心配は不要だけど、俺に似てしまった亜蘭に関しては、めちゃくちゃ心配だ。
ありがたい事にシルヴァの血も入っているから、亜蘭にもキラキラ感はある。(親の欲目では無い筈だ!)
その上、王子様として育っているから、俺のような庶民感は全く無いし品だってある。
でも、顔が地味なんだよ!
ごめんよ!どっちもシルヴァに似てくれと願ったけれど、生まれた双子を見て衝撃を受けた。
確かに、先にデーヴィドが卵子として腹の中に居たのだから、二卵性双生児なのは仕方が無い。
でも、せめて容姿はシルヴァに似て欲しかったと親心で思ってしまう。
俺の手をキュッと握り締める亜蘭を、そっと抱き上げてシルヴァと並んで歩く。
少し歩いたところにある川辺に行き、まずは小高い街を見渡せる場所に建てられたお墓に手を合わす。
そこは、シルヴァを命懸けで守ろうとして命を落とした名も無き性奴だった美しき青年の墓だ。
俺達はずっと、この墓にお参りを欠かさない。
二度とあんな悲劇を起こさないように、シルヴァは奴隷制度を完全に消滅させた。
墓参りを済ませ、流れの緩やかな川でデーヴィドと亜蘭の二人が楽しそうに遊んでいるのをシルヴァと二人で並んで見守る。
シルヴァは三十代になり、整った容姿に加えて王の品格と年齢の落ち着きと色気で女性に大人気だ。
新聞にシルヴァの肖像が載るや否や、その日の新聞は瞬く間に売れてしまうらしい。
ゆっくりと草むらに腰を下ろし、自分の子供を見守るその姿は確かにカッコいい。
それは認めよう。
だけど……
「多朗、うちの子は本当に天使なんじゃないのか?」
と言って鼻の下を伸ばす姿は、親バカ丸出しだ。
そんな事を考えながら、シルヴァの隣に座って子供達を見ていると、シルヴァの手が俺の手を握り締めて
「多朗……、子供はだいぶ大きくなったよな」
そう真顔で言い出した。
俺はまさか……と思いながら
「そろそろ……夫夫の時間を作っても良くないか?」
と、色気を孕んだ瞳をして来た。
「え?あ……いや。いつも寝かし付けてるうちに、寝ちゃうんだよな~」
あはははってから笑いしてなんとか誤魔化そうとすると
「多朗、俺は5年間。年に何度かのサシャの家に行くまで、そういう事を一切我慢してきた。もう、良いんじゃないかな?」
と言われてしまう。
実際、あれだけ性欲魔神だったのに、つわりが始まってから身体を求めなくなった。
安定期に入っても、無事に産まれるようにってキスだけで手を繋いで眠っているだけだった。
生まれてからは、毎晩子供を挟んで寝ているから、サシャの家に泊まりに行った時くらいしかしていない。
それも、子供がある程度の年齢になって、アイシャと寝たがって別々に寝るようになってからだ。
「お前さ……側室的な人は作らないの?」
何気無く、本当に何気無く聞いた瞬間
「多朗!僕が欲情するのも、抱きたいと思うのも、多朗だけだよ!」
前のめりで叫ばれてしまう。
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