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第94話
あまりのシルヴァの剣幕に
「わ……悪い。ちょっとした好奇心で、聞いただけだ」
と言うと、シルヴァは俺の両手を握り締め
「多朗!冗談でも二度と言わないでくれ。僕は、王家に興味も無ければ国政も本当はどうでも良い。でも、多朗と、僕達の子供が安心して暮らせる未来を作るために頑張っているんだ」
そう呟いた。
本当は……国民みんなの未来も心配しているのは分かっている。
シルヴァはいつだって、家族と同じように国民を愛しているから。
「そうだな。でも、お前がめちゃくちゃ人気があっても嫉妬しないのは、お前を信じているからだから」
と微笑んで呟いた瞬間、シルヴァの目が輝いて
「多朗!」
って抱き着こうとしたその時
「母様!お魚が、お魚がいます!」
デーヴィドの声で、俺は思わす抱き着こうとしたシルヴァの顔を手で退かし
「今行く!」
と答えて立ち上がる。
「多朗!今は僕との時間なのに」
唇を尖らせて拗ねるシルヴァに、俺は手を差し出して微笑む。
「ほら、俺達2人の子供達が待っている。行くぞ」
シルヴァは俺の言葉に溜め息を吐くと
「母親の顔より、伴侶の顔が見たいな!僕は!」
そう言って俺の手を取って立ち上がった。
こんな風に、穏やかに笑っていられる生活が出来るなんて思いもしなかった。
元の世界には二度と戻れないけど、俺はこの世界で穏やかな幸せを重ねている。
エリザ、和久井。
お前らはそっちの世界でどうしてる?
きっとエリザは、あの本で俺達の幸せな日々を見て安心しているんだろうな。
ふと見上げた空は、シルヴァの瞳の色と同じ真っ青な青空が広がっている。
シルヴァと離れていた時、俺は青い空が大嫌いだった。
でも今は、何よりも大好きな色になった。
子供達に両手を引かれ、川に入るシルヴァに視線を向けると、シルヴァも穏やかな優しい顔をして子供達と笑っているう。
俺はやっぱり運命とかそういう言葉は嫌いだけど、それでもシルヴァと出会えたのは奇跡ではなくて定められた運命なんだって思う。
「多朗!多朗も一緒に入ろう!川にたくさん魚が泳いでいるよ」
手を振るシルヴァに、俺も手を振り返す。
この先の未来、なにがあるのかは分からない。
でもきっと、シルヴァと子供達との未来は幸せで光り輝いていると信じている。[完]
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