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第95話 オマケ
その日はシルヴァがお休みで、お風呂と寝かし着けをしてくれると言ってくれて、俺は久しぶりにゆっくり1人でお風呂に入った。
子供達も、シルヴァと風呂に入るのが嬉しかったらしく、普段、いくら俺が呼んでも中々来ないチビ達が、率先して準備を済ませてシルヴァと手を繋いで風呂に向かった。
俺は僅かな自由時間に、ゆったりとお茶を飲みながら自分の番を待つ。
子供達が居る騒がしい時間も嫌いではないけれど、ゆっくり出来る静かな時間が本当に有難い。
しばらくすると、賑やかな声がドアを開けて入って来た。
「母様、お待たせ!ゆっくりお風呂に入ってきて!」
「来て!」
デーヴィドと亜蘭が、シルヴァと手を繋いで現れて上機嫌だ。
「ありがとう。はしゃぎすぎて、父様に迷惑掛けなかったか?」
チビ達の頬にキスをしながら言うと、シルヴァの方が興奮した顔で
「多朗、この子達は素晴らしいよ!自分で衣類を脱ぎ着出来て、もう1人で身体を洗ったり出来るんだ!」
と、キラッキラした顔で言ってやがる。
俺達は、子育てをなるべく自分達でやらせてもらっている。しかし、執事やメイド達に育てられたシルヴァにとって、身の回りの事は大人がしてくれていたので、ある程度の年齢まで自分の事が全く出来なかったらしい。
俺は苦笑いを返しながら、寝室へと向かう子供達とシルヴァを見送ってから風呂に向かった。
一人でのんびり入るなんて、本当に久しぶりだとばかりに長風呂をしてしまい、テラスで少し夜風に当たった後に部屋に戻る。
すると、部屋の前にシルヴァの身の回りの世話をずっとしてくれていて、今はチビ達の面倒を見てくれているマリアが立っていた。
マリアは、シルヴァがルーファスに捕まっていた時、殺されたと思われていた女性だ。
実は衛兵隊長が髪の毛だけを切り、マリアを東の外れにある衛兵隊長の実家に身を潜めさせていたのだ。
戦いの後、シルヴァはマリアと再会して、泣いて喜んでいたっけ……。
そんな事を思い出しながらマリアに近付くと、ドアの向こうから微かに声が聞こえる。
(歌……?)
思わずマリアの隣で足を止めると、マリアがハッとした顔で俺の顔を見上げ
「多朗様、すみません。シルヴァ様の歌声を、久しぶりに聞いたもので……つい」
と言って、ぺこりとお辞儀してゆっくりと部屋の前を去って行った。
俺はそっとドアを開け、隣の寝室から聞こえるシルヴァの歌声に耳を傾ける。
愛情のこもった優しい歌声。
俺もしばらく、隣の部屋で目を閉じて聞いていた。
(前から良い声だと思っていたけど、歌まで上手いのかよ!)
顔良し、スタイル良し、声良しだけでも羨ましいのに……。ちょっと嫉妬心がメラっとした所で、子守唄がゆっくりと消えた。
そっと覗きに行くと、子供達がスヤスヤと寝息を立てて眠っている。
「多朗、戻っていたのか?」
ヒソヒソ声で言われ、俺は子供達の方に向いて横向きでベッドに横たわるシルヴァの背中辺りに座って、子供達の寝顔を見た。
シルヴァと一緒にお風呂に入ったり、寝かし付けてもらったのが余程嬉しかったらしい。
二人とも口元を綻ばせて眠っている。
「シルヴァ、ありがとう」
声を潜めて言いながらシルヴァの頬にキスをして言うと、ゆっくりと身体を起こしてシルヴァはベッドから降りた。
(あれ?一緒に寝ないの?)
と思っていると、俺を抱き上げて寝室を後にした。
「シルヴァ?」
驚いて声を上げると、唇を塞がれて
「しっ!子供達が起きちゃうだろう?これからは僕達の時間だよ」
そう言って隣の部屋に俺を連れ込んだ。
きちんと整えられた寝具を見て
「お前……最初から、そのつもりだったな?」
目を据わらせた俺に
「たまには、多朗を独り占めさせてよ」
そう言って、俺をベッドに押し倒した。
唇を重ね、久しぶりに感じるシルヴァの肉厚の舌の感触に息が上がる。
やっと唇が離れ、俺は荒い呼吸のまま
「シルヴァ、歌……上手いんだな」
そう呟くと、シルヴァが恥ずかしそうに頬を赤らめ
「聞いてたのか?恥ずかしいな……」
って呟いた。
俺が小さく笑い
「何で?惚れ直したよ」
と言うとシルヴァは、はにかんだ笑みを浮かべて
「多朗に褒められると、凄く嬉しい」
なんて言いやがるから、胸がキュンキュンしてしまうじゃないか。
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