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第96話
「多朗……勃って来た……」
甘い声で耳元に囁かれ
「あっ……」
っと声が漏れる。
シルヴァの綺麗な手が、そっと俺自身をパジャマの上からゆっくりと撫でる。
「あっ……んっ……」
漏れる声を抑えようと人差し指を噛むと
「ダぁ~メ。声、聞かせて」
えろ魔神と化したシルヴァが、色気とフェロモンを出して情欲に濡れた眼差しを向けながら、俺の手を口元から離して首筋にキスを落とした。
「あっ……あっ……」
「多朗の声……すっごく可愛い」
耳元で甘く囁いて耳朶を甘噛みすると、首筋から喉元に唇を這わされてパジャマのボタンを外す。
そしてシルヴァの手が差し込まれ、胸に手が這わされる。
「あ……っ、シルヴァ……ダメぇ」
久し振りのシルヴァの手に身体が震える。
シルヴァは俺のパジャマの前を開きながら、手で触れていない方の乳首に舌を這わせた。
「あっ……」
潤む視界の中に見えるシルヴァの金色の髪毛に手を伸ばしそっと撫でると、シルヴァが顔を上げて綺麗な笑顔を浮かべた。
ゆっくりと頭から頬へと手を滑らせると
「お前に触れられるの、凄い久し振りな気がする」
そう呟くと、シルヴァは頬を膨らませて
「気がするんじゃないくて、久し振りなんだよ。多朗、お母さんになってから、全然、相手してくれないし」
拗ねた口調のシルヴァも久し振り過ぎて、思わず笑ってしまう。
「お前のそういう所も、久し振りに見た」
そう言ってシルヴァの頬を両手で包み
「ありがとう。お前は良き王であり、良き父親で、俺は最高のパートナーを得たよ」
そう囁くと、シルヴァは目を潤ませて
「多朗が優しいと、なんだか怖い」
と言って俺の身体を強く抱き締めた。
「なぁ、シルヴァ。こうしていると思い出すな」
ぽつりと呟いた俺の言葉に、シルヴァが不思議そうな顔をして俺を見下ろした。
そう……あれは、ルーファスとの戦いが終わった夜。
シルヴァの部屋で俺とシルヴァはベッドに居た。
「……多朗」
「なんだ?シルヴァ」
「今夜、好きなだけ抱いて良いんだったよね?」
困惑した顔のシルヴァに、俺が苦笑いを浮かべて頷くと
「じゃあ!何で二匹の龍が多朗の両脇で寝てるんだよ!」
って怒っている。
そう。戦いの後、いざベッドで寝ようと身体を横たえた瞬間、お腹から二匹の竜が出て来て俺の両脇にピッタリと寄り添うようにして寝たのだ。
「俺は何もしてねぇよ!」
「じゃあ、何で二匹が邪魔するんだよ!」
とシルヴァが叫ぶと、マシューが目を開けて視線だけシルヴァに送ると
『ママは今日、たくさん、たくさん、たっくさん魔力を使ったんだ。それでパパとエネルギー交換なんかしたら、ママ倒れちゃうでしょう!』
って抗議した。
『大体ね!パパは無限にエネルギーを生み出せるから良いけど、ママはそうじゃないの!おやすみが必要なの!そこの所、分かってるの?』
マシューに言われて、シルヴァが「うっ」とたじろいだ。
「魔力を使ったから、余計に魔力の補充が……」
『水の魔力より炎の魔力が増えたら、ママ、余計に弱るの分からないわけ!』
鼻息荒く怒るマシューに、シルヴァがガックリと肩を落とす。
「分かったよ。今夜は我慢する」
しょんぼりと大人しく隣で寝たシルヴァ。
……でも、翌日も、その翌日も二匹は俺の両脇をガッチリガードして眠っている。
「……お前ら、絶対邪魔してるだろう?」
フルフルと身体を震わせるシルヴァに
『ママの身体は、これから子供を産む為の身体に作り変わるんだよ。だからダメ!』
と、二匹が俺の身体に巻き付いて眠るようになって、シルヴァはしょんぼりと隣に横たわる。
そんなシルヴァがあまりにも可哀想で
「シルヴァ……その、ごめんな」
と言うと、シルヴァは小さく笑って俺の頭を撫でると
「僕こそごめん。多朗、元気な赤ちゃんを産んでくれ」
そう言って頬にキスをした。
この日から出産まで、シルヴァはキスをするだけで身体を求めなくなった。
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