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1st Crime 1
ほんの少しの冒険でいい。
『息をしてみたい』
塾へ足が向かなくて、志月はまた『街』と呼ばれる繁華街に来ていた。数ヶ月前、夜のこの街に一度来てから、最近よく立ち寄る街。自分とはまったく違った種類の人で溢れるこの世界を、ただ歩くのが好きだった。享楽にしか興味がないような風景。自由が溢れる桃源郷。
ひしめき合うように並ぶ様々なショップをぼんやり眺めながら歩く。初夏の街、開放的な空気が流れる季節。
遅い時間なのに若者が溢れていて、学生服を着た者も沢山いた。志月はいわゆる有名進学校の制服で歩いていても、少し横目で見られるくらいで、特別浮くようなことはなかった。中には同じ制服を着た者もいた。息抜きとばかりにネクタイを緩めだらだらと歩いている。誰も志月に目を止めない。一見この街に不釣り合いの人間でも、いや、誰が居ようと、そんな事に興味がある連中は少ないのかもしれない。
メンズ雑貨の店頭に並ぶシルバーリングが志月の目に止まった。立ち止まってそれを見つめる。目線を上げると店員は接客中で店頭にまで気が回っていなかった。
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