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1st Crime 2

 志月は一瞬息を止める。  わざと荒く削った表面に外国のコインの模様が彫られた指輪。沢山の凝った装飾が並ぶ中で、何故か目を引くデザインだった。  コインの指輪にそっと手を伸ばす。  心臓がバクバクと音を立てる。  額から汗が吹き出る。  指輪を掴んだ手をぎゅっと握りズボンのポケットに突っ込むと、志月は足早にその場を離れる。と、前も見ずに走り出そうとしたその肩が、だらりと歩いて来たミニスカートの少女にぶつかる。 「ってえな!」  飴を咥えたピンク色の唇が志月を咎める。 「す、すみませっ…」  俯いたまま擦れる声で謝って、志月は逃げるようにその場を離れた。  数十メートル走った所で後ろを振り返る。店員が追ってくる気配はない。志月が早く立ち去ろうと踵を返した瞬間、 「見たでえ」 「?!」

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