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1st Crime 3

 真っ暗な路地から低い声がした。息が止まる程驚いて足が竦む。志月がそちらに顔を向けた瞬間、路地から手が伸びて志月の制服のジャケットを乱暴に引っ張った。  投げるように倒された頬に冷たい滴が当たる。暗い空から雨が落ちてきた。志月は肘を着いて身体を起こそうとしたが自分の意思とは裏腹に身体が震えて上手く支えられない。      飲食店の裏なのだろうか、ビールの空き瓶の入ったケースが乱雑に積まれている。それに寄りかかるようにして志月は何とか上半身を起こす。 「指輪盗ったやろ?」  ボサボサの髪、だらしなく生えた髭、だらしなく伸びたシャツ。年齢も分からない男が雨に濡れながらゆっくり近づいて来る。万引きを見つかった恐怖と、カサついた大きな手が自分に伸びてくる恐怖とで、志月の体は大きく震え始めた。 「ええ学校の制服着て、人生棒に振りとないやろ?」  言いながら男が動けない志月を跨いで座る。自分の二倍はありそうな男の身体が圧迫するように志月に押し付けられる。 「ちょっと我慢したらええんや」  男が志月の太腿辺りに下半身を擦り付けながらニヤリと笑う。 「…や」  激しく降り出した雨が路地の入り口を煙らせる。助けを呼ぼうにも声が出ない。  助けを呼んだ所でどう説明する?  志月の頬を殴るように雨が打ち付ける。男が志月のシャツを乱暴にめくる。ハアハアと獣のような息が耳元で響いた。

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