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1st Crime 9
自宅の玄関のドアを開けると母が立っていた。雨でびしょ濡れの志月の身体を心配する様子もなくヒステリックな声が飛んでくる。
「何なのその格好、塾はどうしたの?!」
志月は玄関で立ち尽くしたまま俯いている。泥と雨で汚れた制服からは水滴が落ち続けていた。
「…転んじゃって、傘なかったから」
「なにやってるのよ、そんなので医学部行けるの?大丈夫なの?」
裸足のままエントランスに降りてきた母が傘立てから傘を取る。そしてそれを大きく振り上げた。
「うっ…!」
容赦ない力で傘が志月の身体に打ち付けられる。『いつものこと』のように志月が声を殺して耐える。
「まったく出来が悪いわね!陽志はあなたのせいで死んだのよ?!この家を継ぐのはもうあなたしかいないの志月!」
「ごめんなさい、ごめんなさい…!」
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