『現場付近はストリートキッズと呼ばれる未成年の往来だけでなく、飲食店も多いことから付近の会社員など人通りが多く、犯人の特定は困難を極め…』 「ちょっとテレビのボリューム下げてくださいよ！」 　担任が誰ともなしに怒鳴って舌打ちした。 「まったく、こういう事件を起こす奴は頭の悪い街のダニ共だろうよ」 　吐き捨てるようなその言葉に頭を殴られたような目眩を感じ、志月は額に浮く汗を拭った。 「…すみません先生、体調が悪いので早退します」 　そう告げると志月は、何か言おうとする担任に会釈だけ残して足早に職員室を出た。 　どうして？どうして？ 　その言葉以外頭に浮かんでこない。 　雅街の駅の改札を走り出る。駅前の広場には平日の日中にも関わらず若い男女が群れていた。志月はその中に暁の姿を探すが、長身のタトゥーの姿はどこにもない。 　どうして？何度も頭の中を駆け巡る問い。　 　脅しもしない、警察に連絡もしない、あの少年は一体何なんだ？！