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2nd Crime 5

「…ちょっとでよかったんだ。ほんの少し『こちら側の世界』を覗いてみたかったんだ」  独白のような志月の声を、暁は煙草を銜えたままじっと聞いている。 「万引きくらいの…小さな罪でよかったんだ…なのに…」  人を殺めるなんて。  言葉に出来ずに志月が唇を噛む。年齢の割りに幼くみられるその顔が、悲痛に歪んでいく。それでも何も言わずに暁はじっと志月を見つめている。 (あんな風にはなりたくない) 「だっていつもあなたたちは…こっちの世界の人は…笑ってたから」 (あんな風に生きてみたい) 「こっち側なら…俺だってきっと…」  喉の奥が熱くなる。言葉に詰まった瞬間、視界が隠され、志月の身体が前方に傾いだ。 「…あ…かつき?」  暁の左腕が自分の頭を抱き抱えるように回され、視界を奪っていると志月が気付いたのは数秒後だった。暁が首を傾げるようにして、自分よりずいぶん背の低い志月の髪に頬を付ける。

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