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3rd Crime 9
「ダメ…殺す、とか…死ぬとか…」
怖いよ。
怖いよ、暁。
そう言われているような気がして、暁は我に返ったように握っていた石を離した。
暁が志月の頬を一度撫でる。唇が「ごめん」と動いた。
「茂、お前が盗んだ『ウサギ』のことな、『撒く側』で問題になってるみてーだぞ」
「!」
茂が紫に腫れた顔で志月を見上げる。その目には恐怖が宿っている。
「もうこの街には来るな」
静かだが威圧感のハンパない声で暁が告げる。這いつくばったままだった茂が最後の気力を振り絞って、何度かつまずきながら、ほとんど這うようにしてその場を後にした。
茂が流した血がべっとりと地面に残っている。志月は目眩を覚えて口元を押さえた。
これが暁の居る世界。
こっち側の世界。
雨の排水溝に流れて行った血が脳裏に蘇り、志月は吐き気を催して生汗を浮かべる。
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