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3rd Crime 10

「ケガしてないか志月」  手に付いた血を乱暴にジーンズで拭いて、暁が志月の腕を取りゆっくり立たせる。その大きな手が志月の頬を包んだ。志月はその温もりにひどく安堵していることに気付く。こみ上げていた吐き気が少し治まる。  覗き込むように暁が志月の顔を見た。 「あー顔無事だな、よかった」 「え…顔?」  至近距離にある暁の瞳に、鼓動が高まるのを感じながら、志月が顔に手をやって聞き返す。 「だって男でこの綺麗な顔は国宝もんじゃね?」 「なっ、何それ!」  綺麗?!  志月の顔が熱くなる。鼓動がどんどん早くなるのを感じる。暁の顔を見ていられなくなって志月は目線を下げた。 「えー、言われたことねえ?」  吐息がかかるほどの距離。 「…そんなの…言われても、揶揄だと思ってた」 「ほら、やっぱ言われたことはあんじゃん」  暁がニヤッと笑った。そして親指で頬をゆっくり撫でた。 「…綺麗だよ、マジで」

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