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3rd Crime 11

 本気でそう思っているような、少しトーンの落ちた暁の声に、志月は胸を押さえて目を閉じた。からかってるの?きっと自分の顔は真っ赤になっている。  さっきまでの殺気に満ちた気配はもう暁からは感じなかった。あの雨の日と同じ温かさだけが頬から伝わる。  暁は微笑むと、倒れたルミの方へ向かう。 意識が有ることを確かめると。ルミを抱き抱えた。 「ついて来な志月、ルミを寝かせたらそれ渡しに行くぞ」  暁がクマのぬいぐるみを指差す。 「あ…うん」 「ずっと守ってくれてたんだな。ありがと志月」  その言葉に、志月の火照っていた頬がすっと冷める。  そうだ、暁には決めた女性がいるんだ。  胸に小さな痛みを感じながら、志月は暁の元に駆け寄った。  ***

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