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3rd Crime 12

 廃ビルと思っていた建物にはルミと同じ歳くらいの少女が何人か共同生活していて、暁はルミをその少女たちに託した。  裏繁華街への道を戻ると、真っ黒い壁のクラブの前で暁が止まった。そのまま路地に入る。 「あの子にそのクマ渡してきて、志月」  暁が指差す方向に志月が目を遣る。そこにガードレールに座る女子二人組が見えた。その片方、派手なメイクで年齢不詳だが、ブラックコーデでセクシーなミニドレスが、志月に自分より年上な印象を与える。  出会った日に暁が一つ年下だと言っていたのを思い出す。暁の外見からはそう見えないが、目の前の女子は十七の暁よりは確実に年上だろう。 「『夜明けよりアイヲコメテ』って合言葉」 「あ、愛を込めて?!」  志月が復唱して顔を赤らめる。志月は一度暁を見上げたが、暁はニヤッと笑っただけだった。志月はギュッとぬいぐるみを抱きしめる。 (胸がモヤモヤする…)  そう感じながらも志月は路地を出ると女性の元に向かった。

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