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3rd Crime 13
「あ、あのっ!」
女性の前に立つ。志月が緊張したまま掛けた声に「なにお前?」と訝し気に女性が睨みをきかせる。もちろん志月はこういうタイプの女性と接するのは初めてで、どう切り出していいか解らず、とりあえずぬいぐるみを差し出した。
「夜明けより、あ、愛を…」
上手く舌が回らない。すると女性が言葉をつなげた。
「こめて?何だ暁の仲間かよ、ナンパかと思った」
「ちょ、この子めっちゃ可愛くね?」
「ほんとだ、自分よりカワイイ系にナンパとかされたら殴るわー」
隣に座る友達と笑いながらぬいぐるみを受け取る。立ち上がった女性はヒールのせいもあるが志月より背が高く、スタイルも抜群でモデルのように見えた。
ああ、こういう女の人なら暁に似合いそう…。そう思った途端、志月は息が詰まって胸を押さえる。
「クマゴジツカイタイ、伝えろ。じゃーな」
そう言い置くと女性はそのまま去って行った。
「え?告白の返事とかは?」
キューピッドをさせられているのだと思っている志月は、あっさり去って行った女性の後ろ姿を見て焦る。どうしようかと後ろを振り向くと、路地から顔を出した暁が戻って来いと手招きしていた。
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