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4th Crime 4
「優しくて、優秀で、誰にでも好かれる兄だった。俺も大好きだった」
母の期待に応え続けた。志月は好きな道を歩むといいよと言ってくれた。
「父には愛人がいて、子供もつくってた、認知もした」
「マジか…」
顔をしかめた暁の素直な反応に志月が小さく頷く。
「その子が優秀でさ。兄さんが居た頃ならそうでもなかったんだろうけど、母が焦ったんだよね、俺じゃその子に劣るんじゃないかって」
志月が少し間を置いて続けた。
「…自分が父に捨てられるんじゃないかって」
それ以来、志月に異常に勉強を強いるようになった。
「息が出来なくなってたんだな、志月」
暁が煙草に火を点けた。薄暗くなりかけた屋上に小さな光り。
「…殴るんだ、俺のこと」
「え…」
暁がもたれていた鉄柵から身体を起こす。
「でも不安な母の気持ちも分かるから…俺…なのに、俺は…」
志月が言葉を詰まらせる。
兄を奪って、自分は出来が悪くて、もうどうしようもない罪悪感しか残らない。志月は手のひらの指輪をきつく握る。
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